• 2022/02/24 掲載

円金利上昇はポジティブ、30年金利で1%は1つの節目に=第一生命

ロイター

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植竹知子

[東京 24日 ロイター] - 第一生命保険の円債運用担当者は24日、足もとの国内金利上昇は同社の円債運用にポジティブと評価した上で、30年金利が1%を上抜けることは「短期的には1つの節目」との考えを示した。債券部資金債券課のシニアファンドマネジャー、大平栄一氏がロイターのインタビューに答えた。主なやり取りは以下の通り。

──世界的な金利上昇、足もとは国内金利の急上昇も目立つ。どう見るか。

「グローバルでインフレが高進して懸念が高まっている。特に米国ではエネルギー価格に加えて賃金の上昇も物価を押し上げており、米・英の中央銀行が先行して金融政策の引き締めに動き始めた。その流れの中で世界的に金利が上昇している。今起きているのはコロナ禍を背景に始まった大規模金融緩和という大きな流れの巻き戻し、つまり過剰流動性相場の巻き戻しだ」

「国内金利については海外金利の影響もあるが、直近の急上昇はECB(欧州中央銀行)のタカ派化が決定打となった。欧州は失業率改善の一方で賃金上昇が明確に見えず日本と同じグループと思われていたが、先日(3日)にラガルド総裁が年内の利上げを否定しなかったことで投資家の見方が一変した。ECB以外の中銀もタカ派化して日銀にも動きが出てくるのでは、と海外勢を中心に投資家の金利上昇への警戒感が急速に高まり、円金利上昇につながったと考える」

「テクニカルな要因だが、年初からの株安で年金資金が債券を売って株を買ったリバランスのフローも、国内金利上昇に寄与したとみている」

──円金利上昇が第一生命の債券運用に与える影響について。

「金利上昇は我々にとってポジティブだが、直近は上昇スピードが速かった。JGB(日本国債)市場は流動性が低下しやすく、20年債入札があった日(17日)は金利上昇が速過ぎてマーケットが荒れ、一時的だが市場の流動性が低下してやりづらさを感じた」

「当社は中長期的な視点から資本効率改善と金利リスク削減を図るため、継続的に超長期債の買い入れを進めており、必ずしも短期的な相場変動の影響を受けることなく、淡々と買うスタンスだ。ただなるべく良いタイミングで買いたいので、金利が上昇すれば多少買いのペースを上げるなど、相場をみて機動的にペース調整している」

「一般論として金利上昇により我々が円債投資をしやすい環境になるのは確かで、その点では非常にポジティブ。だがそれはきちんと流動性を伴っての金利上昇で、過度に乱高下すると投資家としてはやりづらい」

──国内金利の見通しについて。

「上昇方向とみるが、ウクライナなどの地政学リスクや米国の中間選挙など先行きは政治リスクが色々あり、また過剰流動性の巻き戻しという面でも、向こう1年は非常にボラタイルな相場を予想する。水準では先日(17日)も30年金利が(0.995%と)1%に近付いたが、年末には1%超えていておかしくない」

「日本の投資家は海外勢ほど日銀の金融政策変更を意識していないとはいえ、以前ほどは安心しきってはおらず、様々な変更の可能性を意識する人が増えている。春先にはインフレ率の上昇が見えており、悪い円安や物価上昇に対する懸念が強まる場面ではマーケットで金融政策の修正が意識され、1%を上抜けることもあるだろう」

「米金利もボラタイルと見ており、一本調子の上昇ではなく上下に振れ幅がある中での上昇基調というイメージ。年前半まではインフレがテーマで、米国は利上げをしていき、QT(量的引き締め)も始めるだろう。市場は(利上げが景気を過度に冷やす)オーバーキルを気にしており、中間選挙もあるため、年後半はそれを見極める展開となりやすい」

──日銀の金融政策見通しについて。

「今年は今まで以上に日銀の金融政策決定会合や展望レポートに注目が集まる年になりそうだ。足もとのコロナの影響が落ち着けば、フォワードガイダンスの下方バイアスの修正が行われると考える。ただし黒田日銀総裁も指摘する通りエネルギー価格主導の物価上昇であり、賃金が上がり景気が良くなる好循環が見えない限り、金融政策の大幅な変更は議論しづらいだろう」

「春先にインフレが高まる局面や、悪い円安や物価上昇の懸念が強まる場面では、市場参加者は(長期金利の変動)レンジの拡大やYCC(イールドカーブ・コントロール)のターゲットの10年から5年への短期化などに思いを巡らせることになるのではないか」

──新年度を見据えた円債運用について。

「金利は上昇方向で、投資環境は好ましい。タイムフレームにもよるが、短期的には30年金利で1%は1つの節目で、良い水準と思う。ボラタイルな1年との見通しに基づき、そこを抜ける局面を常に意識して運用を行っている」

「海外金利との相対感もあるが、米国が利上げすればヘッジコストも上昇するので、ヘッジ後利回りで比較して米国債よりJGBを選ぶことはあるだろう。ただ今年はボラタイルな年で、あまり決めつけずに相場を見て機動的に動きたい」

(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)

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