- 2021/06/29 掲載
理研と富士通、スーパーコンピュータ「富岳」が「TOP500」リストで3期連続第1位を獲得
これらのランキングは、現在オンラインで開催中のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「ISC2021」において、6月28日付(日本時間6月28日)で発表されました。
これら3部門における3期連続の第1位獲得は、「富岳」の総合的な性能の高さを示すものであり、新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety5.0(注3)において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発およびデータの利活用に関する技術開発を加速するための情報基盤技術の役割を「富岳」が十分に発揮できることを実証するものです。
1. 「富岳」測定結果
(1)TOP500
今回、「TOP500」リストに登録した「富岳」のシステムは、432筐体(158,976ノード(注4))の構成で、ランキングの指標となるLINPACK性能は442.01PFLOPS(ペタフロップス)、実行効率は82.3%です。
なお、2021年6月時点の「TOP500」リストのランキング世界第2位は米国の「Summit」で、測定結果は148.6PFLOPSです。すなわち、今回「富岳」は第2位と約3倍の性能差をつけたことになります。
<関連リンク>
・TOP500ランキング: https://www.top500.org/lists/top500/
・TOP500: https://www.top500.org/
(2)HPCG
「HPCG」の測定には「富岳」の432筐体(158,976ノード)を用いて、16.00PFLOPS(ペタフロップス)という高いベンチマークのスコアを達成し、今回「富岳」は3期連続の世界第1位を獲得しました。この結果は、「富岳」が産業利用などにおいて実際のアプリケーションを効率よく処理し、高い性能を発揮することを証明しています。
なお、2021年6月時点の「HPCG」のランキング第2位は米国の「Summit」で、測定結果は2.93PFLOPSです。すなわち、今回「富岳」は第2位と約5.5倍の性能差をつけたことになります。
<関連リンク>
・HPCGランキング: https://www.top500.org/lists/hpcg/
・HPCG: https://www.hpcg-benchmark.org/
(3)HPL-AI
「HPL-AI」は、倍精度演算器の能力を測定する「TOP500」や「HPCG」などと異なり、AIの計算などで活用されている単精度や半精度演算器などの能力も加味した計算性能を評価する指標として、2019年11月に制定されたベンチマークです。この測定には「富岳」の432筐体(158,976ノード)を用い、2.004EFLOPS(エクサフロップス)という高いスコアを記録しました。このスコアにより、「富岳」は3期連続で世界第1位を獲得しました。これは、「富岳」の高い性能を証明するとともに、「富岳」がAIの計算やビッグデータ解析の研究基盤としてSociety5.0の推進に大いに貢献し得ることを示しています。
なお、2021年6月時点の「HPL-AI」のランキング第2位は米国の「Summit」で、測定結果は1.15EFLOPSです。すなわち、今回「富岳」は約1.7倍の性能差をつけたことになります。
<関連リンク>
・HPL-AI: https://icl.bitbucket.io/hpl-ai/
補足説明
1.スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」
スーパーコンピュータ「京」の後継機。2020年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期的な成果創出、ビッグデータやAIの加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータとして2021年3月に共用が開始された。 「富岳」は"富士山"の異名で、富士山の高さがスーパーコンピュータ「富岳」の性能の高さを表し、また富士山の裾野の広がりがスーパーコンピュータ「富岳」のユーザーの拡がりを意味する。また、"富士山"は海外での知名度も高く、名称として相応しいこと、さらにはスーパーコンピュータの名称は山にちなんだ名称の潮流があることなどから理研が選考した。
2.共役勾配法
物理現象をコンピュータでシミュレーションする場合、大規模な連立一次方程式として解くことが多い。連立一次方程式を解く方法として、解を直接求める直接法と、反復計算を行うことで正しい解に収束させていく反復法の2つがある。共役勾配法は、後者にあたる反復法の一つであり、前処理を組み合わせることにより、早く正しい解に収束させることができる。コンピュータシミュレーションの世界ではよく使われている。
3.Society5.0
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。IoT(Internet of Things)、ロボット、AI(人工知能)、ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会の実現を目指すこととしている。
4.ノード
スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステムが動作できる最小の計算資源の単位。「富岳」の場合は、1つのCPU(中央演算装置)および32GiBのメモリから構成される。
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