- 2020/12/22 掲載
アングル:中国製造業の驚異的回復、工場では人手不足が深刻化
中国の産業ロボット、コンピューター機器、集積回路の生産は、一時は新型コロナウイルスの影響で停滞したが、その後持ち直し、1─11月の生産はそれぞれ22.2%、10.1%、15.9%増加した。
中国製造業の回復の原動力は、主に海外からの需要だ。中国の輸出の伸びは、過去9カ月のうち8カ月において、予想を上回った。
中国は新型コロナの流行封じ込めにほぼ成功したとされている。対照的に、コロナの感染拡大にいまだに歯止めが掛からない他の主要国の多くでは、工場の生産体制が依然として正常化していない。
野村によると、世界の輸出に占める中国のシェアは、第2・四半期と第3・四半期は13%を突破、昨年の11%から上昇した。野村がデータの収集を開始した少なくとも2006年以来の高水準に達した。
欧米では緊急経済対策で消費者の懐が潤う中、新型コロナの感染防止に向けて中国製の個人防護具(PPE)の需要が拡大。消費者が自宅で過ごすことが増えたため、いわゆる「巣ごもり」需要も活発化した。
政府のデータによると、輸出ハブの義烏を含む中国浙江省金華市では11月、工業セクターの被雇用者が2017年末以来の高水準となった。
義烏で熱フラスコの工場を所有するオーナーは「年前半に50人ほどを解雇したが、今では受注が急増し人手不足になった。生産を拡大することができない」と話す。解雇した元従業員の一部は故郷で職を見つけており、来年2月に旧正月を控える中、戻ってきたがらないという。
顧客からの要望に対応すべく、このオーナーは11月末に、効率向上のため2本の自動生産ラインを導入した。オーナーは「以前は考えたこともなかったが、今年はとにかく忙しく、選択肢が尽きた」と説明している。1本の自動生産ラインは、労働者10人分に相当するという。
ブルーカラー労働者の需要を測定する中国人民大学の指数は、第3・四半期に過去最高を記録。地元メディアの報道によると、一部の工場では工員の賃金を25%引き上げて月1万元(1530ドル)とし、大卒者の平均初任給を大幅に上回る額に設定したという。
<最高の年>
広東省広州に本社を置く自転車製造会社の幹部は、新型コロナの影響で海外の消費者が公共交通を避ける傾向が強まったため、中国の自転車産業にとって2020年は過去10年間で最高の年になったと話す。
同幹部は「9月と10月に生産能力を一杯に使い切り、臨時の労働者もたくさん雇った」と説明。工場では現在、1000人程度の正規の従業員に加えて、臨時の労働者が100人ほど働いている。
製造業の投資は、1─11月は3.5%減と、回復の足取りは鈍い。ただ、力強い輸出需要を背景に、第4・四半期は持ち直している。
投資銀行CICCのアナリストによる調査によると、投資は11月は前年同月比12.5%増と、10月の3.7%増から加速している。
欧米向けにスピーカーを生産している会社のオーナーは、過去数年との比較で需要は25%増加していると話す。この会社では、需要拡大に対応するため社員に残業させているほか、フルタイムの従業員を20%上回る時給約18─19元で、臨時の労働者も雇っている。さらに最終手段として、他の工場を賃借して生産を肩代わりさせているという。
<輸出ブームは一過性との見方も>
政策当局者にとって、厳しい年の輸出ブームは歓迎すべきものだ。アナリストは、中国輸出セクターの驚くほどの耐性により、景気浮揚に向けた大規模な刺激策を講じる必要性が低下したと指摘する。
中国は11月末までに、年間の雇用創出目標を122%達成した。
ただ、新型コロナの流行が沈静化すれば他の諸国でも生産が拡大すると見込まれるため、製造業者はこのブームが続くとは思っていない。
前述の自転車会社の幹部は「(輸出ブームは)パンデミック(新型コロナ大流行)で始まった。ワクチンが普及すれば終わる」と話した。
(Gabriel Crossley記者、Stella Qiu記者)
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