- 2020/10/14 掲載
アングル:米キャタピラー、コロナ対策で自動運転技術に賭ける
ロイターが入手したキャタピラーの社内データによると、今年の採掘作業向け自動運転技術の売上高は前年比で2桁の伸びとなっている。半面、ブルドーザーや採掘用トラックなど他の建機はこの9カ月間に販売が落ち込んでおり、これは小松製作所<6301.T>や米ディア
キャタピラーの建設デジタル&テクノロジー部門のフレッド・リオ氏は、数マイル離れた場所から操縦可能な遠隔操作技術を来年1月に市場に投入すると明らかにした。
リオ氏によると、キャタピラーは宇宙関連機関と協力し、衛星を使った技術の開発も進めている。この技術を使えば、米国にいる作業員が世界中のどこの現場の建機とも交信可能だという。
しかしキャタピラーが自動運転分野重視の戦略を採用したのは、新型コロナ流行が始まってからではない。同社創業以来の経営不振を受けて、増収計画の一環として2017年にこうした戦略に着手した。
ただ、自動運転技術はまだ開発から日が浅く、キャタピラーの経営全体から見れば、極めて小さな部門にすぎない。同社は自動運転分野の売上高を公表していないが、いくら需要が高まっているといっても、近い将来、売上高全体の中で大きな比重を占めることはないだろう。キャタピラーの昨年の総売上高は約540億ドルだ。
研究・開発に数十億ドルを投じるキャタピラーにとって、自動運転技術はコスト面の負担も重い。しかし自動運転や遠隔操縦の技術が新型コロナ大流行後も長期にわたって需要を維持できるか不透明で、ハイテクがけん引する生産性向上により建機の新規販売が落ち込む恐れがある。
<高まる熱狂>
しかし自動運転技術は、これまでキャタピラー製建機の購入が少なかった顧客からの受注に貢献している。
資源大手リオ・ティント
鉱業界では既に自動運転トラックや遠隔方式のロードホールダンプなどでこうした技術が部分的に導入されていた。しかし新型コロナの感染拡大によるロックダウンで普及が加速した。
小松製作所で自動運転技術を担当するアンソニー・クック氏は、新型コロナ流行で顧客の多くが設備投資計画を前倒しし、自動運転の導入を進めていると述べた。新型コロナ危機は自動運転分野にとって打撃ではなく、「むしろ熱狂の度合いが高まった」という。
<差別的優位性>
キャタピラーと小松製作所は世界の「無人ダンプトラック運転システム(AHS)」で大きなシェアを握っている。しかしアナリストの間からは、他社の機器にも後付け可能な方式を採用しているキャタピラーの方が優位だ、との声が出ている。小松製作所の技術は自社製品でしか使えない。
小松製作所のクック氏は、後付け方式は目先の解決策であり、小松は異なるブランドの機器を安全かつ効率的に運用することができる技術を開発中だと述べた。
一方、キャタピラーのジム・ホーキンス氏は、鉱山会社は大きなコストをかけて建機全体を大々的に見直すことなく、ハードウエアやソフトウエアを購入して自動運転が可能になるため、後付け可能な方式は売上高アップに貢献したと話した。
キャタピラーは建機と切り離して自動運転技術を販売している。ホーキンス氏によると、既存の建機への自動運転技術の後付けは、これまでのところ成長の最大のけん引役だが、最近は最初からこうした技術を組み込んだ建機を発注する顧客が増えている。
ホーキンス氏によると、キャタピラーはハードウエア、ソフトウエア、ライセンスなどに手数料を課しており、こうした技術を導入するコストは規模や契約期間により5000万ドルから数億ドルに達する。
キャタピラーはサービス関連の売上高拡大に取り組んでおり、昨年180億ドルだったこの分野の売上高を2026年に280億ドルに引き上げる目標を掲げている。
メリウス・リサーチのアナリスト、ロブ・ワーセイマー氏は、鉱業企業の老朽化した建機の買い換えや自動運転技術導入の需要は、ライバル企業に対して「差別的優位性」を持つキャタピラーにとって追い風になると指摘。「キャタピラーは戦略的に良い位置にいる」と話した。
(Rajesh Kumar Singh記者)
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