- 2020/10/05 掲載
アングル:トランプ氏感染でも動かぬソブリン債、真価は
最上位格付けのソブリン債は、デフォルトのリスクがゼロというだけでなく、危機に際して価格が上昇する点から、投資家は株安に対するヘッジ先として最も頼りにしている。ところが2日、欧米で株が売られたにもかかわらず、米国債とドイツ国債はあまり値上がりせず、「安全資産」としての真価が問われようとしている。
市場が新型コロナを巡るパニックに見舞われた今年序盤には、確かにソブリン債の利回りは低下(価格は上昇)した。しかしそれ以降、主要中央銀行による相次ぐ利下げや大規模な債券買い入れを受け、反応が鈍い市場に変わってしまった。
それを裏付けるように、2日に債券を急いで買いに走る投資家は見当たらなかった。というのも中銀の買い入れでユーロ圏のソブリン債の6割強は利回りがマイナス圏に沈み、米国債利回り
プライム・パートナーズのフランソワ・サバリ最高投資責任者は「コロナ危機のせいで、分散投資手段としての政府債の魅力が大きく減退していることが確認された。だから投資家はリスク回避で株式から資金を引き揚げるとしても、絶対に債券には回そうとしない」と解説する。
もちろん最上位格付けソブリン債は今のところ、決してデフォルトなど起こさないとみられている。しかし市場の地合いが悪化する場面で、値上がりする力があるかどうかが疑問視されているのだ。
サバリ氏は避難先として金を選好し、今年に入って配分比率を5%から8%に引き上げている。実際、オンス当たり2000ドルを超えて過去最高値を更新した金
特に物価が低調なだけに、足元の弱い経済指標やトランプ氏の感染と大統領選を巡るリスクを踏まえ、中銀がさらに買い入れを拡大してソブリン債の需給を引き締め、利回りを押し下げかねない。
パインブリッジ・インベストメンツのマルチ資産責任者マイク・ケリー氏は、ドイツ国債の発行残高の3分の1、日本国債にいたっては4割強を中銀が保有している現状について、中銀が市場機能を実質的にまひさせていると指摘。過去1カ月のリスクオフ局面でソブリン債利回りが「ゾンビ」のような動きだったことに投資家は失望しており、安全資産として取引される長期債が必要だと訴えた。
<上がる危機のハードル>
そこで運用担当者にとって、リスクまみれの世界でどこに資金を投じるかが悩みの種となる。
プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフストラテジスト、シーマ・シャー氏は、金以外では投資適格級社債が有効なヘッジ先になり得ると提言する。より高い利回りが得られる上に、中銀の買い入れ対象になっているので比較的安全だという。
一方、トランプ氏の感染が、もはや債券買いに殺到する材料として力不足なのかもしれない。
ナティクシスの調査ソリューションズ責任者シリル・レグナット氏は、11月3日の米大統領選にもっと近づけば、米国債は今の狭いレンジを抜け出す可能性が高まるとみている。
また今年これだけ混乱が続いただけに、債券の逃避買いが起きるには世界経済の先行きが現在よりずっと悲観的な方向に振れる必要があるのではないか。プリンシパルのシャー氏は「危機とみなす段階が以前に比べていささか高くなっている」と話した。
(Dhara Ranasinghe記者、Sujata Rao記者)
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