- 2020/07/31 掲載
高成長でも財政黒字化は29年度に遅延、公債残GDP比200%超=内閣府試算
基礎的財政収支(PB)は社会保障関係費や公共事業など毎年の歳出(除く国債費)と税収など歳入との差額で、財政健全化の目安となる。
内閣府では年に2回、今後10年程度のPBの推移などを盛り込んだ経済財政見通しである「中長期の経済財政試算」を経済財政諮問会議に提出している。高めの潜在成長率を前提とする「成長実現ケース」と、足元までの成長率を前提とする「ベースラインケース」の2パターンを提示してきた。
前回1月の試算では、中長期的に実質2%、名目3%の「成長実現ケース」におけるPB黒字化は27年度となっていたが、今回、これが2年遅延する姿を示した。
他方で、最近までの現実的成長を反映した実質1%程度、名目1%台前半の成長を前提とした「ベースラインケース」では、PBは見通し期間の最後の29年度まで黒字化できず、債務残高のGDP比もほとんど改善しない見通し。
国・地方の公債等残高は、名目成長率が上がるにつれて税収も増え歳出を高齢化要因や物価上昇率程度の増加で抑えることを前提とした通常のベースに戻ることから、債務急膨張は回避できる姿となっている。高成長ケースではGDP比率が足元の216%から徐々に低下し、29年度にはGn!P比で175%程度まで下がると予想。しかし、ベースラインケースでは210%程度で横ばいで推移すると見込んでいる。
ただし、今回示された試算は、高成長・低成長ケースのいずれにおいても、コロナ感染症に伴う今年度の大幅な需要不足を来年度以降20年代前半にかけて一気に取り戻し、その後は潜在成長率並みで成長できるとの前提に立っている。「骨太方針」で示されたようなデジタル化や「新たな日常」といった経済が生産性向上が実現する「明るいシナリオ」であることは念頭に置く必要がある。
(中川泉 編集:田中志保)
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