- 2020/07/30 掲載
インタビュー:一喜一憂せず、超長期の視点で運用=宮園GPIF理事長
宮園理事長は農林中央金庫、企業年金連合会を経て今春に就任した。
インタビューは29日に実施した。主なやり取りは以下の通り。
──1─3月期は大幅な損失となった。
「四半期としても一番大きな損失であり、非常に重く受け止めている。ただ、累積の収益は着実に積み上がってきている。そういう意味では、長期的な点での役割は果たせてきているのではないか」
──市場環境は非常に見通しにくい。理事長としての課題は。
「年金財政が成り立つような、長期的な収益を確実に確保していくというのが一番の目標だ。定められた基本ポートフォリオに基づいて、着実に実践していくことに尽きる」
──新型コロナの影響で投資理念は変化したか。
「農林中金も巨大な投資家だが、金融機関であり1年間の決算がある。一方、GPIFは超長期の投資家であり、それゆえ取れるリスクもある。リーマン・ショックや今回のコロナのようにショックを受けるのは同じだが、長い期間の中での事象としてとらえていくことができる。一喜一憂せず長期的な視点で運用を行っていくというのは、コロナショックがあっても変わらない」
──コロナによる市場環境の認識や見通しに変化は。
「3つポイントを置いてみている。1つは、各国の積極的な財政金融政策が市場にどう影響を与えるか。2つめは、企業に潤沢な流動性が供給されている一方で、企業の負債も増えており、それが金融機関や金融システムに影響を与えるか。3つめは、コロナで生活様式が変わる中で企業のビジネスモデルや産業構造がどう変化していくか。これは潜在成長率の変化を通じて期待収益率に影響してくる」
──今後もESG投資は積み上げていくか。
「きちんと取り組んでいきたいと思っている。ESG投資のリターンも含めてきちんとモニタリングしていく、その取り組みを国民にも開示していく必要があると思う」
「なぜESG投資をやるかというと、我々が超長期投資家であるからだ。経済社会が持続的に発展し、その果実を享受していくというのは超長期投資家にとって生命線だ。ただ、資金配分を無制限にやるかどうかというと、そこにはおのずと一定の限界値もある。資金配分の中で考えていくことだと思っている」
──石炭火力への投資についてはどう考えるか。
「これははっきりしている。運用は受託機関に一任している。我々自身が銘柄選択をするということはない。GPIF法には投資一任の原則というのがある。ダイベストメント(投資撤退)や銘柄選択というのは選択肢になりえない」
──外債は国内債の受け皿としての構図が続いてきたが、今後も増えるか。
「国内債を減らしてきたのは国内の低金利環境のためだが、4分散の基本ポートフォリオに基づく資産配分であり、単純に国内債から外債にシフトするというオペレーションではない。株がオーバーウエートしたら、外債を増やすという選択肢もある」
「さらに今は、グローバルに低金利化が進んでいる。オートマチックに国内債から外債というわけではない。一方、外債には米国債や社債、モーゲージ債など多種の商品がある。多様化というのはひとつの課題だ」
──世界的な低金利で相対的に日本国債の魅力が上がっていないか。
「日本国債を嫌っているわけではない。25%の基本配分がある。相対的に魅力度が増すかどうかは何とも言えないが、指摘されたように、国内外でみていくと、日本の債券も投資対象として魅力がまだあるとも考えられる。繰り返しになるが、基本ポートフォリオをベースにうまく運用していくかということだ」
──株式や債券以外のオルタナティブは運用先として有力か。
「オルタナ投資はそれほどたくさん伸ばせるものではない。投資家間の競争が激しく、その中で良質な資産を積み上げていくのは難しい」
──市場ではたびたび「クジラ」が動いたと言われることがある。
「市場インパクトを与えないというのは我々のオペレーションの大原則。それは世の中を騒がせないということもあるが、市場インパクトを与えてゆがめてしまうと結局こちらも損をする。それゆえ、どのくらいの取引量、オペレーションだと市場インパクト出るのかといったことは、常時研究していく必要がある。市場のウオッチは基本動作だと思っている」
(伊賀大記、梅川崇、佐古田麻優 編集:田中志保)
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