- 2020/07/30 掲載
米FRB、全会一致で金利据え置き 景気支援に「あらゆる手段」
FRBは声明で「この厳しい局面で米経済を支援するためにあらゆる手段を行使し、雇用最大化と物価安定という目標を促進することに全力で取り組む」と表明した。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「新型ウイルス感染者の増加、および感染拡大抑制に向け新たに講じられた措置が経済活動の回復の重しになり始めている幾分の兆候が、ここ数週間見られている」と指摘。「米国は新型ウイルス感染拡大への対応で新たな段階に入った」と述べた。
その上で、米経済の先行き不透明性がいかに高いかを強調。感染を巡る状況は目まぐるしく変化しているため、政策当局者は携帯電話の利用状況で人々の動きを追跡する企業のデータなどから動向を把握しようとしているとし、「感染が急拡大し始めてから景気回復のペースは鈍化したようだ」と述べた。
米国では南部と南西部を中心に感染がこのところ急拡大している。エコノミストやアナリストの間では迅速な景気回復に対する期待が後退しているが、パウエル議長の発言はこうした見方を裏付けるものとなった。
FOMC声明も、米景気回復の動向は新型ウイルス感染を巡る状況に直接につながっているとの見方を反映。「経済活動と雇用は急速な落ち込みの後、ここ数カ月で幾分持ち直したが、年初の水準を大きく下回ったままだ」とし、「経済の道筋はウイルスの行方に著しく左右されるだろう」とした。
その上で「委員会は経済が最近の出来事を乗り切り、雇用最大化と物価安定の目標を達成する軌道に乗ったと確信するまで、この目標誘導レンジを維持すると予想する」とした。
パウエル議長は「利上げについては検討することすら考えていない」と断言した。ホテルやレストランなどコロナの打撃を受けた業界で失われた雇用がすぐに戻ることはないとし、景気回復には長い時間がかかると指摘。「当面はこうした状態が続くだろう」と語った。
FOMC声明の公表後、米株は上げ幅を拡大。長期の米国債利回りは小幅に上昇した。ドル指数<.DXY>は2年ぶりの安値に沈んだ。
エドワード・ジョーンズ(セントルイス)の投資ストラテジスト、ネラ・リチャードソン氏は「FRBが声明で『経済の道筋はウイルスの行方に著しく左右される』と表明したことは注目に値する」と指摘。「新型ウイルス感染がどのように展開するか予見できないのは周知の事実だ。この文言はFRBが見通しにおいて新型ウイルス感染状況を重視していること、さらに見通しは不確実性が高いことを示している」と述べた。
パウエル議長は、公式の経済統計で成長鈍化が確認されれば、一段の政策緩和も可能との考えを示唆した。
30日に発表される第2・四半期の米国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率34%減と予想されている。
6月の前回FOMC以降、米国のコロナ感染状況は悪化。1日当たりの新規感染者は平均で6万5000人程度と、6月中旬のおよそ3倍となっている。
今回のFOMCでは、フォワードガイダンス強化を巡り討議され、FRBは失業率とインフレ率が明確な目標に達するまで金利変更はないと確約する可能性があるとの見方も出ていた。ただ今回のFOMC声明にはこうした変更を示す文言はなく、アナリストは次回9月のFOMCに持ち越されるとの見方を示している。
FRBは資産買い入れプログラムについては、毎月少なくとも1200億ドルの米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを継続する方針を示した。
FRBは米国で新型ウイルス感染が拡大し始めたことを受け、3月15日にFF金利の誘導目標を0─0.25%に引き下げた。以来この水準に据え置いている。
*内容を追加しました
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