- 2020/07/16 掲載
日本のESG投資、目立つ「ボランティアの延長」の声=日銀論文
ESG投資は欧米が先行し、日本での歴史は浅いが、足元では政府主導で取り組みが進められている。論文では、欧州は地球温暖化抑制という「社会的リターン」の追求、米国は金銭的リターンの追求と目的意識がはっきりしている一方で、日本の機関投資家の目的意識はまちまちだと指摘。「自らのポートフォリオの気候変動リスクを抑制する観点からもエンゲージメント(企業との建設的対話)などを一段と加速させる」という機関投資家がある一方で、「(本業とは直接関係ない)ボランティアなどのCSR(企業の社会的責任)活動の延長として取り組んでいる」、「レピュテーション改善効果が主目的」といった声も少なからず聞かれたとした。
日本の機関投資家から挙げられた実務上の課題としては、ESG投資に利用可能な情報が限られていることや、ESG要素と金銭的リターンの関係性に確信が持てないこと、先行きのリスクなどを検討するにあたり気候変動の影響など考慮すべき要素の不確実性が大きいこと、最新の科学技術などの専門知識を活用できる体制を整備する必要がある点などを列挙した。
ESG投資にあたっての金銭的リターンについて、学界・実務家双方でのコンセンサスは形成されていないという。論文では、ESG関連情報の開示が限られていることで実証分析が難しくなっていると指摘。「金銭的リターン向上なども含めた自らのESG投資方針に沿って、真に重要な非財務情報は何かという中長期的な視点から、ESG投資手法の洗練や企業側とのコミュニケーション強化に取り組むことが肝要だ」との見解を示した。
(和田崇彦)
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