- 2025/04/14 掲載
英下院、ブリティッシュ・スチールの政府管理を全会一致で可決
[ロンドン 12日 ロイター] - 英議会下院は12日、経営難に陥っている英鉄鋼メーカー、ブリティッシュ・スチールの操業を政府が管理することを認める法案を全会一致で可決した。ブリティッシュ・スチールは英国で唯一の高炉を持つ鉄鋼メーカーで、レイノルズ・ビジネス貿易相は下院で「国への所有権移譲は引き続き選択肢にあり、現段階では会社の状況を考慮するとそれを選ぶ公算が大きい」として、国有化の可能性が高まっているとの認識を示した。
中国の敬業集団傘下にあるブリティッシュ・スチールは英スカンソープ製鉄所で約3500人の従業員を抱えている。環境に配慮した製鉄法への移行に対する英政府の補助金支給で合意に達しなかったのを受け、存亡の機に陥っていた。
法案が施行されれば、政府がブリティッシュ・スチールの取締役会と従業員を指揮し、給与の支給を確実にして、高炉の稼働を継続させるための原材料発注も可能となる。ブリティッシュ・スチールは1日当たり70万ポンド(91万5600米ドル)の赤字を垂れ流している。
スターマー首相は法案が英国の鉄鋼産業に未来があることを意味しており、国益にかなうものだと訴えた。
休会中の土曜日に議会が召集されたのは、アルゼンチンと英国が互いにフォークランド諸島(アルゼンチン名マルビナス)の領有権を主張して戦闘が勃発した1982年のフォークランド紛争以来。レイノルズ氏は下院で、ブリティッシュ・スチールが長期的には民間企業と提携することに期待するとした上で「本日に行動を起こさなければ、より望ましい結果を検討することすらできなくなる」と強調した。
ブリティッシュ・スチールは世界市場で鉄鋼の供給過剰が続く中で苦境に立たされており、トランプ米大統領が今年3月に発動した鉄鋼に対する25%の輸入関税が追い打ちをかけた。業界団体UKスチールによると、英国の鉄鋼輸出先のうち米国は約5%(年間4億ポンド相当)となっている。
ブリティッシュ・スチールが操業を停止すれば英国は主要7カ国(G7)で唯一高炉を持たない国になり、レイノルズ氏はそうなれば外国製鉄鋼に依存することになると問題視した。また、トランプ氏が課した関税の撤廃を目指して交渉することを検討すると表明した。
英政府は鉄鋼分野向けに25億ポンドの予算を既に計上しており、2025年春に鉄鋼分野の戦略を発表するとしている。政府はスカンソープ製鉄所の操業資金を既存の予算から捻出すると説明した。
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