- 2024/06/11 掲載
焦点:米経済「微妙」、FRB金利・経済見通し明確な方向示さない公算
[ワシントン 10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が11─12日の連邦公開市場委員会(FOMC)で発表する最新の金利・経済見通しで、年内に想定される利下げの回数は3カ月前の見通しよりも少なくなると予想されている。
金利・経済見通しでは、インフレ率の上昇と成長率の鈍化が示される見通し。同時に、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「実際の結果は異なる可能性がある」という警告を発する可能性がある。
昨年は経済成長の加速とインフレ鈍化を受け予想通りにはならなかったが、現在はインフレ上昇と成長鈍化で予想通りの展開になるかは不透明。こうした中、FRB当局者はこのところ、想定される経済の今後の道筋の「代替経路」にも言及。不確実性を認識すると同時に、見通しを流動的に保つための手段でもあり、パウエル議長もFOMC後の記者会見でこうした戦略を採用する可能性がある。
元FRB理事で現在コンサルティング会社マネタリー・ポリシー・アナリティクスに籍を置くラリー・マイヤー氏は先週「マクロ経済見通しと政策戦略を首尾一貫した形で結びつけるストーリーの重要性を、私は常に強調している」とした上で、「ストーリーの強さは、最近急上昇している不確実性の度合いに左右される。こうしたケースでは、代替シナリオに一段の注意を払う必要がある」と述べた。
昨年末以来、FRBは予想の「正確さ」を味方につけられていない。FRB当局者は年内に3回の利下げ実施を確実視したように見えたが、インフレが予想通りに低下しなかったことで翻弄(ほんろう)されている。その結果、年内に0.25%ポイントの利下げが2回、もしくは1回実施されるとの見通しに修正される可能性が高い。ただ、それさえも疑問視されている。
<FOMC声明、インフレ「高止まり」>
12日は労働省が5月の消費者物価指数(CPI)を発表。その後FRBが米東部時間午後2時(日本時間13日午前3時)に最新の金利・経済見通しとFOMCの結果を発表する。FRBはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の5.25─5.50%に据え置くと予想されている。
主要な物価指標はFRBの前回3月の金利・経済見通し以降、さらに4月30日─5月1日の前回FOMC以降、ほとんど変化していない。このため、FRB当局者はインフレが低下に転じるまで利下げ開始に慎重な姿勢を崩していない。FRBは今回のFOMC声明で、インフレ率は「依然高止まりしている」との認識を引き続き示し、金利変更を巡る議論は先送りされる公算が大きい。
<状況は一段と微妙に>
ウォラーFRB理事は労働需要と失業率の動向の関係を詳しく調査しており、1月に行った講演で、求人率が4.5%を下回れば失業率は大幅に上昇するとの見方を示した。
SGHマクロ・アドバイザーズの米国担当チーフエコノミスト、ティム・デュイ氏は「ウォラー理事が正しければ、(FRBが担う2つの責務のうち)雇用を巡る責務を考慮に入れなければならない段階に予想よりも早く近づく可能性がある」と述ベた。
ただ、雇用と賃金の伸びは依然として堅調。労働省が7日に発表した5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比27万2000人増で、予想を大きく上回った。失業率は3.9%から4.0%に上昇したものの、賃金の伸びは再び加速した。
5月の雇用統計では、このところの他の経済指標と同様に、相反するシグナルが示された。EYパルテノンの上級エコノミスト、リディア・ブスール氏は「堅調な雇用創出、堅調な賃金上昇、労働供給の弱まりの組み合わせは、労働市場がなお引き締まった状態にあることを示している」と指摘。ただ、失業率が再び上昇したことで、労働市場が軟調になりつつあることを示す他の指標が裏付けられたとし、「状況は一段と微妙になった」と語った。
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