• 2024/02/22 掲載

バランス良い成長への契機に=稲野和利・元日本証券業協会会長―東京株式・識者インタビュー

時事通信社

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日経平均株価は1989年末の最高値を超えるのに34年を要した。当時の株価が収益力に照らして高過ぎ、日本経済が長期の「自信喪失」に陥ってしまったことが大きい。積極的な賃上げなどバランスの良い成長を目指す契機とすべきだ。

私は80年代、野村証券で企業の資金調達が任務だった。85年のプラザ合意後の緩和的な金融・財政政策を受けて世の中にはお金があふれ、企業は資金を財テクに回し、「根拠なき熱狂」が共有されていた。

90年代の株価の急落後は、当時の大蔵省が金融機関に通達した不動産向け融資の規制や不良債権処理の遅れもあり、経済・株価が必要以上に深い「谷」に陥った。日本経済は自信喪失どころか自虐に慣れてしまった。

日経平均が最高値を更新したとはいえ、米国の優良株で構成するダウ工業株30種平均が同じ期間に14倍に成長したのとは雲泥の差だ。技術革新や新興企業の輩出が不足したことは素直に反省すべきだろう。

今後は賃上げが不可欠だ。企業の利益確保のしわ寄せを従業員に向かわせるのは良くない。人口減の中でも成長していくため、外国人の優秀な働き手の参加を促す魅力的な機会を提供できるかも大事になる。

稲野

和利氏(いなの・かずとし)東大法卒。76年野村証券(現野村ホールディングス)入社。野村アセットマネジメント社長、野村ホールディングス副社長を経て13~17年に日本証券業協会会長。現在、日本証券奨学財団理事。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに応じる元日本証券業協会会長の稲野和利氏=16日、東京都千代田区

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