- 2024/02/15 掲載
インタビュー:米国は成長市場、大統領選見据え情報収集を強化=東京ガス社長
[東京 15日 ロイター] - 東京ガスの笹山晋一社長はロイターとのインタビューで、海外戦略の柱と位置付ける米国市場について、今年11月の大統領選挙が事業環境に影響する可能性があり、情報収集と分析を進めていると明らかにした。昨年末に米シェールガス開発企業を約4000億円で買収した際は、トランプ政権誕生の可能性も念頭に置いて決断したと語った。
笹山社長は米国市場を「非常に成長性がある」と説明。昨年12月にロッククリフ・エナジーを買収し、今年2月にはガス販売大手アーム・エナジー・ホールディングスが設立するアーム・エナジー・トレーディング社への出資で合意した。米国で天然ガスの開発からマーケティング、販売まで手掛ける態勢を整え、2030年までに19年比3倍の500億円という海外事業の利益目標の半分程度をここから生み出したい考え。
笹山社長は「シェールとその周辺で半分近くは行ければと思っている」と述べた。水素と二酸化炭素から作る合成メタンを米国で製造して日本へ輸出することも検討しており、「米国のプロジェクトは個々のプロジェクトではなく、将来に向けていろいろつながってくる可能性がある。将来の発展性、成長性もありうる」と語った。
中国経済が落ち込む一方、米国が自国に投資を呼び込む姿勢を強め、日本企業による対米直接投資はこのところ増加傾向にある。少子高齢化で国内では成長が望めない日本企業にとっては自然な流れだが、11月の大統領選挙の行方が不透明要因として意識されている。
笹山社長は「バイデン大統領が再選なら環境政策が、とか、トランプ元大統領が勝利したらエネルギー分野にこういう影響があるのでは、などいろいろと言う人がおり、そういう情報を収集してわれわれなりに解釈することはやっている」と語った。
東京ガスがロッククリフを買収したのは昨年12月。トランプ氏が共和党候補の指名獲得レースで優位に立つ前だったが、笹山社長は「(トランプ政権誕生の)可能性はあるとは思いながら(買収を)決めた」と話した。ロッククリフが天然ガスの開発を手掛けるのはテキサス州とルイジアナ州で、「共和党の地盤。トランプ政権になったとしてもあの辺りのプロジェクトにブレーキをかけるのはなかなか考えにくい」と述べた。
世界情勢が大きく変化していることから、米国以外でも情報収集を強化し、日本にある海外事業部を通じてだけでなく主要な海外拠点と直接意見交換をするようにしているという。笹山社長は「経営のリスクを低減するためには、様々な情報を集めて考えないといけない」と語った。
*インタビューは13日に実施しました。
(久保信博、大林優香 編集:石田仁志)
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