- 2024/01/31 掲載
アングル:FRBがQT終了に向けた議論開始か、3月に具体的計画発表との予想も
[30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)でバランスシート圧縮、いわゆる量的引き締め(QT)の打ち切りに向けた議論を開始する――。大方の市場関係者がこうした見方をしている。
2023年12月開催のFOMC議事要旨を見ると、複数のメンバーがQTの幕をどう下ろすかについての協議を始める用意が整ったとの考えを示したことが分かる。
元ニューヨーク連銀幹部で、現在はバンク・オブ・ニューヨーク・メロンの市場構造責任者を務めるナタニエル・ワーフェル氏は、この議事要旨で「FOMCが今月の会合でQTのペースダウンの議論に乗り出す態勢だということが明白になっている」と指摘。また前回のQTが終了した19年9月に市場で起きた混乱がFRBに残した傷はかなり深く、彼らは同じ轍を踏まないための取り組みを進めようとするだろうと予想した。
そうした混乱を避ける目的で、FRBは3月のFOMCでQTのペースを緩める具体的な計画を発表し、恐らくは5月FOMCですぐに実行へ移す、というのがエバーコアISIやバークレイズ・キャピタル、JPモルガン、ジェフリーズ、TDセキュリティーズなどの見立てだ。
この場合、まずは保有米国債の削減規模を縮小する公算が大きく、QT自体は夏までに終わってもおかしくないという。
一部の市場関係者は、FRBがかねてから保有債券を米国債だけに絞りたいと願っている点を踏まえると、QTの主要部分が終了した後もなお、保有する住宅ローン担保証券(MBS)の自然償還を促す措置は続くのではないかとみている。
いずれにしても今回のFOMCでどんな話し合いが行われたのかの詳細は、議事要旨が公表される2月の段階で判明するだろう。
<流動性の動き>
FRBは現在、米国債とMBSの合計で毎月最大950億ドルの償還資金の再投資を見送っている。22年に始めたバランスシート圧縮を通じてこれまでに、約4兆6000億ドル相当の債券買い入れを巻き戻した計算だ。
22年夏場に過去最大の9兆ドルまで膨らんだバランスシートは、足元で7兆7000億ドルになった。
一方でFRBは、金融システムへのショックを和らげるためや、短期金利をコントロールできるように、十分な流動性を維持することも目指しており、直近のQT終了時の「失敗」は繰り返したくないと考えている。当時のやり方は市場の動揺を誘い、最終的にFRBが介入して流動性を戻す作業を余儀なくされた。
そのFRBが今、早急なQT見直しを迫られている理由の一つは、過剰流動性の尺度とされるリバース・レポ・ファシリティー残高の急激な減少だ。22年末には2兆6000億ドルに達していた残高は、29日現在で5814億ドル。この流れが続けば、3月末には残高がゼロになるとの予想もある。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのワーフェル氏は、こうした状況でQTが継続されれば、一部の銀行の資金調達に支障が生じる恐れが出てくると警告した。
もっともニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、短期金利のボラティリティーが増大してきているのは市場が正常に戻った結果だと発言するなど、FRB内からはまだ、QTをすぐに修正すべきだとのシグナルはほとんど発信されていない。
FRBのウォラー理事は今月、QT見直しの必要性を探る重要な手掛かりとして、常設の流動性供給枠組みであるスタンディング・レポ・ファシリティー(SRF)に対する積極的な需要が生じるかどうかを挙げた。今のところ市場参加者の間で、SRFを本格的に利用する動きは見当たらない。
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