- 2024/01/16 掲載
アングル:米財政懸念で債券強気派に動揺、国債増発か QT終了に期待感
[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米国債に対する市場の強気コンセンサスに亀裂が入りつつある。 米連邦準備理事会(FRB)が今後数カ月に利下げに踏み切ると見込まれる一方、財政懸念が再燃しているためだ。
強気派は、FRBが予想通り金融緩和を実施すれば、2023年末に見られた債券の急上昇は今年も続くとみている。FRBの主要政策金利に連動する先物が織り込む利下げ幅は先週末に150ベーシスポイント(bp)以上となり、当局者が先月示した予想幅の倍だった。
一方の弱気派は、今はFRBの緩和期待が債券価格を押し上げているかもしれないが、24年に約2倍の2兆ドルに膨らむと予想される米国債の発行が重しになる可能性を指摘する。利回りが現行水準から上昇しなければ、大量の新発債への需要を喚起できないためで、こうした懸念は昨年10月に国債価格を16年ぶりの安値に押し下げた。
ブラウン・アドバイザリーのポートフォリオマネジャーで債券部門の共同責任者であるクリス・ディアス氏は「財政規律の欠如からとんでもない量の米国債が供給されている。誰が買うのかも定かではない」と話す。特に、財政懸念の影響を受けやすい長期債について「上昇持続を阻む強い逆風になりかねない」とした。
BofAグローバル・リサーチの投資家調査では、24年の「最も確信度が高い」取引として国債価格の下落を見込む取引を挙げたのは23%。国債価格の上昇を見込む取引と答えたのは21%となった。従来の債券への強気の見方が「緩やかに反転」したとしている。
昨年は米国債の持続可能性に対する懸念が高まった。フィッチによる格付けの引き下げと、昨年夏の国債発行計画の増額が債券売りに拍車をかけ、10年債利回りは5%を突破し07年以来の高水準に達した。
その後はFRBのハト派転換観測が強まり、債券価格は23年最後の数カ月に持ち直した。しかし一部の投資家は、債券は将来の金利低下を既に織り込んでいる可能性があると指摘する。財政懸念が再燃した場合、売られやすいということだ。
ウィルミントン・トラストのトニー・ロス最高投資責任者(CIO)は「24年は、国債の発行総額、そしてその国債の買い手がいるかどうかが非常に重要だ」と指摘。インフレが予想以上に根強いという兆しがあれば、状況はさらに複雑になる可能性があると警告する。
<FRBが救済?>
FRBが国債市場の買い手として復帰すれば、長期利回りの上昇を抑えられる可能性があり、こうした懸念も和らぐだろう。
FRBは22年6月以来、量的引き締め(QT)を通じてバランスシートを1兆ドル超縮小してきた。しかし、一部のFRB当局者は最近、債券保有縮小の減速や終了を検討し始めるべきだと主張している。
JPモルガンのアナリストは先週、QT終了が予想より早まれば、民間部門に売却される国債が減り、国債市場の需給バランスが改善する可能性があると指摘した。
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