- 2024/01/10 掲載
アングル:FRBのバランスシートに再注目、終盤の縮小ペース見直す向きも
[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の主要高官による週末のコメントを受け、FRBが現在進めているバランスシート縮小をどのように終了するかに改めて目が向けられ、一部の市場関係者はこのプロセスの終盤に関する見方を修正した。
ダラス地区連銀のローガン総裁は6日、短期金融市場の流動性が縮小することで量的引き締め(QT)の見通しがどのように変わる可能性があるかを説明。ローガン氏は2022年にダラス連銀総裁に就任する前、ニューヨーク連銀の膨大な現金・証券保有を管理し、連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策決定を実行していた。
FRBは20年春から22年夏にかけてバランスシートの規模を倍増させ、約9兆ドルに達した。22年以降、保有する国債と住宅ローン担保証券を毎月1000億ドル弱削減しており、保有残高は7兆7000億ドルに減っている。
FRBは短期金融市場の混乱を回避し、短期金利をしっかりとコントロールできるよう、銀行の流動性を「十分な」水準に保ちたいと考えている。しかし、FRB当局者は道のりが長いと言う以外、QTをどのように終了させるかについてこれまでのところ大まかな指針しか示していない。
利上げ終了がほぼ確実となり、今年の利下げが見込まれる中、バランスシートの見通しは市場の注目の的となっている。市場はFRBがQTを停止する過程で除去したい流動性のバロメーターとして、FRBの翌日物リバースレポ制度の急速な縮小を注視している。
ローガン氏は「私の見解では翌日物リバースレポの残高が低水準に近づくにつれ、縮小ペースを落とすべきだ」と指摘。「バランスシートをよりゆっくりと正常化することで(金融機関が個々の流動性水準を調整しやすくなり)、長期的にはより効率的なバランスシートになる」と述べた。また、銀行にとって流動性がタイトになっている兆候があると指摘した。
<同じ行き先、異なるペース>
ローガン氏の言うプロセスは、前回FRBが保有資産を縮小した際に縮小ペースを遅らせてから終了させたのと同じだ。一部のエコノミストは、FRBの保有資産の最終的な行き先は同じでも、そこにたどり着くまでにはもう少し時間がかかるのではないかと考えている。
ゴールドマン・サックスのエコノミストはノートで、同氏のコメントはFRB当局者が「バランスシートの縮小ペース減速について議論を開始し、その後に減速を少し早める可能性がある」と指摘。「しかしその場合、縮小はもう少し長引き、バランスシートの最終的な規模はほぼ同じところに落ち着くはずであるため、早期開始のマクロ経済的な影響は非常に小さいだろう」とした。
調査会社エバーコアISIのアナリストは「ローガン氏はQTの早期終了を示唆しているわけではない」としつつ、より具体的なロードマップを提供していると指摘。「FRBは担保付翌日物調達金利(SOFR)を注視しており、QTの進展は数量目標と同じかそれ以上に価格シグナルによって導かれるだろう」とした。
その上で「QTペースの減速について内部で合意し、実行するタイムラインは少しスピードアップしている」とし、QTのテーパリング(縮小)は夏に始まり、年末に終わる可能性が高いとの見方を示した。
エバーコアの見解はウォール街の銀行を対象とした調査結果とも一致。ニューヨーク連銀が4日公表したプライマリーディーラーに対する調査(23年12月12日─13日のFOMC前に実施)で、QT終了は今年第4・四半期との見方が示された。
とはいえ、バンク・オブ・アメリカのエコノミストはFRB当局者が3月のFOMCでテーパリングを発表すると予想する一方、QTは夏に終了するとの見方を維持している。
FRBがどのようにギアをシフトさせるのか、その詳細はまだかなり不透明だと指摘する向きもある。
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