- 2024/01/09 掲載
焦点:米経済、雇用の伸び依然高水準 FRBの利下げ判断難しく
[ワシントン 8日 ロイター] - 米経済は新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)がもたらした人手不足を事実上解消した状態で2023年を終えたが、米連邦準備理事会(FRB)当局者は賃金と雇用の伸びが持続可能な水準に戻るのを引き続き確認しようとしている。
12月の非農業部門の就業者数は前月から21万6000人増え、賃金上昇率は4.1%といずれも予想を上回った。これを受け、市場では3月の利下げ観測が後退した。
月次雇用者数の伸びは10万人前後、賃金上昇率では3%前後という数字が、FRBの2%インフレ目標達成で基準になると見なされている。
ネーションワイドのシニアエコノミスト、ベン・エアーズ氏は「強い賃金の伸びと豊富な雇用機会により労働者は依然として優位な立場にある」と指摘。賃金の伸びが4%を超えているため、サービス業のインフレはなかなか収束しないという懸念が強まり、FRBが今春初めに利下げに踏み切るとの観測にも影響が及んでいると説明した。
FRBは12月12日─13に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。ただ、FOMC後に発表された声明の文言は、追加利上げが必要なくなる可能性を容認するものに変更され、新たな経済予測では政策担当者の過半数が年内に0.75%ポイントの利下げが適切になるとの予想を示した。
FOMC議事要旨では、現行金利水準が雇用と経済成長にもたらすリスクは、既にFRB目標の2%に近づきつつあるインフレがもたらすリスクよりも深刻という状態に近づきつつあるとの認識が示された。
ただ、雇用市場は依然として謎に包まれている。雇用者数は過去3年間で1400万人増加した。この歴史的な伸びは、新型コロナ禍で失われた雇用を補うだけでなく、FRBが持続可能な雇用の伸びという点でベンチマークとする水準をわずかに上回っている。失業率は22年2月以来4%を下回っている。
こうした数字が労働市場の堅調を示す一方で、労働市場の減速を示唆する数字もある。10月の雇用の伸びは10万5000人、11月は17万3000人で計7万1000人下方修正された。3カ月平均で見ると、月次の雇用者数の伸びはパンデミック前の10年間の平均である約18万3000人を下回っている。
病気などによる労働時間の損失や労働者の退職率などの指標はいずれもパンデミック前の水準にほぼ戻っている。失業者数に対する求人数の割合もパンデミック前の水準に近づいている。
12月FOMCの議事要旨によると、多くの参加者が金融引き締め策をどの程度長期間維持する必要があるかを巡り不確実性が高まっているとし、過度に制約的な金融政策に伴う景気下振れリスクを指摘した。
さらに、数人の当局者はFRBがインフレの抑制と高い雇用率の維持という2つの目標の間で「トレードオフ」に直面する可能性がある時点に近づいていると感じていることが分かった。
雇用と賃金の伸びが続く一方でインフレ率は低下し続けており、今のところFRBは難しい選択を避けているが、こうした状況は経済の仕組みの変化を反映している可能性がある。FRB当局者は現在、4.1%前後の失業率が2%のインフレ目標維持と整合的であると考えているが、例えば雇用ミスマッチの解消や生産性向上が少なくとも短期的に失業率を押し下げた可能性がある。
一方でFRBは先手を打つべきだとの指摘もある。エンプロイ・アメリカのエグゼクティブディレクターであるスカンダ・アマルナス氏は「雇用の伸びは目に見えて鈍化している」とし、雇用者数の改定や家計対象に行われた別の調査で示された軟調な雇用水準を指摘。「FRBはこれまでのインフレ問題から24年に労働市場が直面し得る下振れリスクに焦点を再調整すべきだ」と述べた。
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