- 2023/09/22 掲載
焦点:東南アジア企業が相次ぎ米上場検討、中国競合の停滞で需要に期待
[シンガポール/シドニー 19日 ロイター] - 東南アジアの複数の企業が米国での上場を検討している。中国企業の新規株式公開(IPO)が落ち込む中、新興国市場の成長に対する投資家の強い需要を当て込んだものだ。
上場先の一つとしてニューヨークを検討しているとロイターに明らかにしたのは、中小企業向けデジタルファイナンスプラットフォーム大手のファンディング・ソサエティーズ、シンガポールを拠点とするエンターテインメント企業のガッシュクラウド・インターナショナル、タイの保険テクノロジー企業サンデー。
ベトナムのインターネット企業VNGとフィリピン不動産企業ダブルドラゴンのホテル101グローバルが最近発表した米上場計画に続くもの。米中の政治的緊張の高まりから米国でのIPOが停滞する中国企業の穴を埋める形だ。
法律事務所DFDLベトナムのシニアリーガルアドバイザー、レイフ・シュナイダー氏は「中国の競合他社は自国の規制と国内経済の低迷により徐々に脇に追いやられている。これらの要因で東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部ライバル社が注目されるようになった」と語る。
ASEAN最大の自動車電子商取引プラットフォーム、カーサム・グループも、上場の可能性について米国を含むさまざまなグローバル取引所を検討しているとしている。
<力強い経済成長と人口増>
東南アジア企業が今年これまでに米IPOで調達した資金は約1億0100万ドルで、昨年の9億1900万ドルを大きく下回っている。しかし、銀行関係者によると、ここ数年間は私募ファンドに頼っていた企業が新たな資金源を探し求めているため、今後1年でペースが上がるとみられる。
一方、LSEGのデータによると、中国企業の米上場による資金調達額は今年これまでに4億6370万ドル。2022年の水準をわずかに上回ったものの、21年と20年にそれぞれ調達した129億6000万ドルと124億8000万ドルには遠く及ばない。
新興国市場へのエクスポージャーを求める投資家にとって、東南アジアは力強い経済成長と人口増加により条件にぴったりだとアナリストは語る。
銀行筋は具体的な企業名を挙げずに、米上場を目指している一部の東南アジア企業は3億─10億ドルの調達を目指しており、評価額は15億─80億ドルに及ぶと明かす。
東南アジア企業の米上場計画は米大手金融機関のアジア拠点にとっても喜ばしいことだ。各行は収入の約3分の1を株式資本市場取引から得ているが、中国IPOはほぼ干上がっていた。
バンク・オブ・アメリカの東南アジア担当ECM責任者、スニル・カイタン氏は「新興国市場に注力していた一部の米国投資家にとって、ハイテク企業へのエクスポージャーは主に中国企業によるものだった。中国を巡る現在の慎重なスタンスから、これらの投資家は他の新興国市場銘柄に目を向けている」と話す。
<ポートフォリオ多様化に価値>
デロイト東南アジアのディスラプティブ・イベンツアドバイザリー部門リーダー、テイ・ホウィ・リン氏によると、物流、テクノロジー、鉱業、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー分野などの企業は国内外を問わずIPOを目指す可能性が高く、国際的な投資家は東南アジアが提供するポートフォリオの多様化に価値を見いだしているという。
ただ、アナリストは見込まれる東南アジア企業の上場拡大について、株式のボラティリティー(変動性)や投資家の厳しい目線によって頓挫する可能性があると話す。
ベトナムのEVメーカーであるビンファストの株価は8月の上場以来約75%急騰しているが、薄商いの中でボラティリティーが大きくなることもある。
米国の投資家はほとんどがデューデリジェンス(資産評価)に精通している。シンガポールに拠点を置くDBSの資本市場担当責任者、アート・アヌルク・カローニャバニッチ氏は「米国の投資家は一般的にさまざまなセクターの事業機会を評価することに長けており、経験も豊富だが、東南アジアの企業が事業に影響を与える可能性のあるその国特有の要因について投資家に情報を伝えることは有益だろう」と述べた。
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