- 2023/09/21 掲載
アングル:米FRBのタカ派姿勢、市場に衝撃 高金利維持に懐疑的見方も
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 長期間にわたって金利を高水準に維持する米連邦準備理事会(FRB)の計画は今後数カ月、株式と債券を圧迫する可能性がある。だがFRBがこの方針を維持することに一部の投資家は懐疑的だ。
FRBは20日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り金利を据え置いた。その一方でタカ派的なスタンスを強め、年内の追加利上げを想定したほか、金融政策は2024年を通して従来の予想より大幅に引き締まった水準に保たれるとの見方を示した。
金利が長期間高水準にとどまれば、株と債券には望ましくない展開も予想される。米国債利回りは既に07年以来の高水準にあり、金利が高止まりすればさらに上昇する可能性がある。S&P総合500種指数は年初から15%上昇しているが、利回り上昇が加速しているため7月下旬の高値から伸び悩んでいる。
クリアブリッジ・インベストメンツの投資戦略アナリスト、ジョシュ・ジャムナー氏は「利下げがいつ行われるかについては予想される結果の幅が広がっており、年末に向けてボラティリティーが高まるかもしれない」との見方を示した。
ただ、市場の少なくとも一部はFRBが金利を高水準に維持することに疑問を抱いているようだ。米短期金利先物市場は20日夜の時点で、FRBが来年金利を合計60ベーシスポイント(bp)近く引き下げ約4.8%とすることを織り込んでいる。FRB当局者の予想は5.1%だ。
TDセキュリティーズUSAの米国金利戦略部門責任者ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「FRBは可能な限りタカ派的なシグナルを送ろうとしているようだ。市場がそれに耳を傾けるかどうかが問題だ」と指摘。「景気が減速し始めればFRBのドットチャートの予想が維持されるとは思わない」と語った。
<米経済はどの程度底堅いか>
FRBは22年3月以来、計525bpの利上げを行った。これが経済にどの程度浸透したか、そして金利が24年の大半も現在の水準にとどまった場合に成長が維持できるかどうかが多くの投資家にとって重要な問題だ。
パウエルFRB議長は経済が「堅調」なら、これまでのインフレ対策と比べて成長や労働市場への打撃をはるかに低く抑えながら、金融状況に圧力を加え続けられると述べた。
ただエネルギー価格の上昇、米自動車労働組合のストライキ、政府機関の閉鎖、学生ローンの返済猶予の終了など、経済の軟着陸見通しを不透明にする短期的なリスクが浮上している。
トゥエンティフォー・アセット・マネジメントの米クレジット部門責任者デービッド・ノリス氏は「インフレは正しい方向に進んでいるが(成長には)多くの逆風が吹いている」と述べた。
バンガード・フィクスト・インカム・グループのシニアポートフォリオマネジャー兼米国債部門責任者ジョン・マジイレ氏は、債券利回りはピークに近く「非常に魅力的」に見えるとの見方を示した。
「利回りが上昇する余地はあまりないだろう。従って長期投資家はこの水準ではデュレーションリスクを追加し、下落があればさらにリスクを追加するために利用すべきだ」と語った。
金利のピークへの賭けはこの1年間で何度も投資家に裏目に出てきた。経済成長が予想以上に強く、23年中にリセッション(景気後退)入りするとの予想を見直さざるを得なくなり、FRBが利下げに転じる時期についても先延ばしを強いられた。
しかし前出のノリス氏は、金利が高止まりすれば軟着陸のシナリオが危うくなりかねないと指摘。「金融政策がこれまでと同様に制限的であればハードランディングの可能性は高くなる」と話した。
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