- 2023/09/20 掲載
「人権」、企業動かす=経営にリスク、取引見直し―ジャニーズ性加害
ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害を受け、世界的に活動する大手企業を中心に、同事務所所属タレントのCM起用を見直す動きが広がっている。企業の商品やサービスのイメージアップに貢献してきたタレントたちだが、性加害という人権侵害を放置することは国際社会が許さず、経営のリスクに直結すると各社が判断しているためだ。
「これでは変革は無理だ」(食品メーカー幹部)。ジャニーズ事務所が初めて性加害を認めた7日の記者会見。社長らが謝罪したものの、具体的な再発防止策などは示されず、加害者の名前を冠した事務所名を変えないという内容に、多くの企業が契約見直しへとかじを切った。
企業に「人権尊重」を求める動きは国内外で加速している。日本政府が2022年に定めたガイドラインでは、自社はもちろん、取引先の人権侵害も防止するよう要請。「人権配慮はこれまで以上に求められる」(大手銀行)時代だ。
食品や自動車、保険まで、幅広い業界のCMに起用される同事務所所属タレントの好感度は高い。契約更新を見送った企業の中にも「消費者の反応が読めず、今回の判断で目立ちたくない」(別の食品メーカー)と打ち明ける声は少なくない。
しかし、「『タレントに罪はないから契約を継続する』という考えは海外で通用しない」(金融機関幹部)との意見が主流になりつつある。会見後、いち早く契約を更新しないことを表明した東京海上日動火災保険は「広告契約はジャニーズ事務所を介したものであり、(タレントだけ)切り離せない」と説明。サントリーホールディングス社長を務める新浪剛史経済同友会代表幹事は「ジャニーズ事務所を使うことは虐待を認めること」と断罪した。
ビジネスと人権の関係に詳しい大村恵実弁護士は「人権侵害の深刻さを踏まえれば取引停止もやむを得ない。再開するための具体的な条件を示すことで、是正を働き掛けることができる」と指摘。企業は取引停止後も同事務所に対し、再発防止や被害者救済を求め続けるべきだとの考えを示した。
【時事通信社】
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