- 2023/04/10 掲載
インタビュー:PBR1倍超目標、安定性と効率性のバランス経営に舵=大日本印刷常務
ロイターのインタビューで橋本博文常務と黒柳雅文常務が述べた。
大日本印刷は2月、経営の基本方針として「ROE10%を目標に掲げ、PBR1倍超の早期実現を目指す」と打ち出した。上場企業が経営目標にPBRを掲げるのは異例だ。
同社はこの3年半、IR(インベスター・リレーションズ)活動を積極化させてきた。多くの投資家と意見交換を行うなかで、株価やROEの低さを再認識したという。橋本常務は「株価が上がっていないことや成長投資、株主還元をもう少し積極化させるなど、投資家との対話で考えるきっかけになった。政策保有株の売却なども時間軸を切って打ち出した」と話す。
PBR1倍超を目標として掲げるかどうかは葛藤があったが、東京証券取引所がPBR1倍割れの是正に動くという考え方が伝わってきたことで「(目標として公表することの)背中を押されたのは事実」(橋本常務)という。
同社の事業内容は、従来の印刷から、有機ELディスプレイの製造に欠かせないメタルマスクなどのエレクトロニクスやリチウムイオン電池用部材のバッテリーパウチなどへと大きく変容。印刷業の時代は顧客の要望に応えることが多かったが、自ら情報発信して事業を拡大することが求められるようになっている。
黒柳常務は「ROEとPBRを中期的な経営目標に掲げることで、これを中心に施策を加速的にやっていきたい。非連続な変革、変えていかなければならないという危機感は強い」と述べ、脱「黒子」へと会社の変革を促すことへの期待もにじませる。
中計の骨子では、2027年度までの5年間で、純資産の3割を占める政策保有株を1割未満へ縮減させるほか、不動産の売却などで900億円以上のキャッシュを創出することも明記した。紙媒体の印刷縮小など事業の変遷により生まれた遊休不動産を新しい事業にシフトして活用するか、売却するか比較検討する。橋本常務は「土地を売って株主還元を行うのは、たくさんのステークホルダーがいる中ではおかしな話。ビジネスは長期的なもの」と話し、短期的なリターンを求める投資家とは考え方が相容れない部分もある。
同社は、今年2月9日に「経営の基本方針」を公表。その中に「ステークホルダーの意見を聞きながら、企業価値の最大化に資する新中計の策定を進める」と記した。その後、3月9日に「新中期経営計画の骨子」を発表。この間も投資家と面談を重ねて公表内容に対する評価を聞き、修正を行ってきたという。
広報によると、これまで四半期ごとの対話は30―40の投資家とだったが、第3四半期の面談は約60にのぼった。決算説明会も従来の2.5倍の出席者が集まるなど、会社側の考えが従来よりも広く理解される環境はできてきている。「5月に公表する新中計では、各事業分野の具体策や非財務面でのKPIをどのように置くか、今議論している」(橋本常務)という。
同社は5月12日に新中計の発表を予定している。
*インタビューは7日に実施しました。
(清水律子 山崎牧子 編集:石田仁志)
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