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- 2022/10/10 掲載
「気候テック」とは何か? 日本の「カーボンニュートラル」を推進する技術
そもそも「気候テック」とは何か?
気候テック(Climate Tech:クライメートテック)とは気候変動問題へ対処する技術全般を意味し、温室効果ガスの排出量を低減するための「緩和」、すでに生じている、あるいは将来予測される気候変動の影響への「適応」に貢献する技術が含まれる。また、ITに関連したものを狭義の「気候テック」として捉えることもある。気候テックが注目されはじめた3つの理由
なぜ、気候テックが注目されているのだろうか。その主な理由として考えられるのが、以下の3点だ。(1)グローバル・アジェンダ(世界のすべての人が取り組むべき課題)になった
気候変動問題は従来より世界的な課題として認識されてきたが、特に2015年のCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)でパリ協定が採択された以降、より高い関心を集めるようになった。
同協定は2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みとして、すべての国が長期的な排出削減目標を提出することを課している。また、それに並行する形で、各国で削減目標を国家の議題として挙げるようになった。
(2)Z世代の影響力が増した
環境活動家のグレタ・トゥンベリ氏に代表されるような、1990年半ばから2010年代生まれの「Z世代」により気候変動問題への関心の高まりに影響しているとも言われている。Z世代の特徴として「公共の利益」に高い優先順位を与える傾向があり、気候変動を含むサステナビリティに意識が高い層が多い。
特にZ世代が20代前半から半ばぐらいの年齢に差し掛かり、自らスタートアップとして気候変動問題の解決に取り組む人が増えるなど、若者の行動力と、企業活動と社会課題の解決を結びつける価値創造ストーリーを重視する社会動向の隆盛など時流が合致したことも要因の1つといえる。
(3)科学的知見によるIPCC調査報告書のインパクト
1988年に設立された政府間組織である「IPCC(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)」は、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供してきた。2013年に発表された「IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書」では「人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い」と報告された。
さらに「IPCC第6次評価報告書」においては「気候変動が人為的な要因で起きており、対策の強化が求められる」と強調する内容が記載され、気候変動が喫緊の課題であること、迅速な対応を求めるものとなった。
気候テックがこれまでの「エコ×IT」と違うところ
特にITに関する気候テックでは、これまでの環境問題に対処する技術、いわゆる「エコ×IT」と異なる点がある。たとえば、「グリーンIT」技術では、いかに電力消費を抑えるかが重視された。対して、気候テックでは、いかに必要な情報の処理を簡素化できるか、などビジネスプロセスの変革を実現する点も重要だ。また、「CO2の排出量がより正確に測定できるようになった」という変化も大きい。現在は、リモートセンシング衛星による衛星画像や「宇宙ビッグデータ(宇宙を周回する人工衛星が観測した地上に関するビッグデータ)」、大容量のブロードバンド、ブロックチェーンといったIT関連の気候テックが花開く土壌ができつつある。特に宇宙関連では、安価な小型衛星などの衛星関連技術、画像解析の技術の進展が大きい。
たとえば、森林管理などにおいて従来は樹木の生育状況を人が計測していた。現在は、衛星技術を活用して上空で撮影したデータを踏まえ、状況を把握できるため、定量的な評価はITを活用することで飛躍的に効率化された方法で実施することが可能になりつつある。
これらの技術の実装により、人の手を介さずに森林のCO2貯留量を全部測り、それをクレジット化して取引するという世界が訪れつつある。
投資額の前年比増加率は210%、気候テックの市場規模
PwCの調査レポート「2021年版気候テックの現状 脱炭素ブレイクスルーの拡大に向けて」によると、2020年下半期と2021年上半期の気候テック投資額(総額)は、総額で875億米ドルに上り、特に2021年上半期は半期単独で600億米ドルを超え、過去最高額を記録。投資額の前年比増加率は210%となっている。また、2021年上半期の平均投資額は9,600万米ドル。前年が2,700万米ドルだったため、1案件当たりの平均投資額は約4倍に増加した。
たとえば、2030年までにCO2の排出量を200億トン削減する場合、1トン削減する際に必要な最低限のコストを1ドルと見積もっても、2兆米ドルとなる。気候テックの全体市場規模は、すなわちCO2削減の市場価値と捉えることもできる。
【次ページ】気候テック利用企業が知るべき「脱炭素化への王道」
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