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マイクロソフトが自動車関連企業との協業を積極的に進めている。自動車業界にもデジタル化の波が押し寄せる中、同社は関連各社のその取り組みを支援する「デジタルプラットフォーマー」になることを目論んでいるようだ。その勝算やいかに──。
「MaaS」を支えるマイクロソフトの役どころとは
「マイクロソフトは自動車業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をしっかりと支援していきたい」──。
こう語るのは、米マイクロソフトで自動車業界向け事業の陣頭指揮を執るサンジェイ・ラビAutomotive Industry担当ジェネラルマネージャーだ。同氏の来日に伴い、日本マイクロソフトが会見を開き、マイクロソフトの自動車業界向け事業について説明した。自動車関連企業との協業を積極的に進めている同社のDX支援の取り組みはどのようなものか。そこにある思惑も探ってみたい。
ラビ氏はまず、自動車業界を取り巻く環境の変化について、「自動車業界は今、歴史上これまでにない大変革期を迎えている」との認識を示した。個人が自動車を所有するのではなくサービスとして車両を利用する次世代移動サービス「MaaS(Mobility as a Service)」の世界に向けて「4つの大きな力が働いている」と語った。
その4つの大きな力とは、「コネクテッド化」「自動運転化」「シェア/サービス化」「電動化」で、自動車業界ではこれらの英語の頭文字を並べて「CASE」(ケース)と呼び、MaaSを構成する重要な要素として捉えられている。ラビ氏はCASEについて、「注目すべきは、これら4つの力が同時に働いていることだ」と強調した。
同氏は自動車業界のエコシステムにおける変化についても、「これまでは自動車における開発、製造、販売、サポートを中心にエコシステムが形成されてきたが、これからはスマートシティやスマートインフラ、スマートコンテンツといった自動車を取り巻くさまざまな要素も加わってエコシステムが形成される」と指摘。
図1が、自動車業界の新たなエコシステムを描いたものである。この図はすなわち、MaaSの姿を表しているといえる。
では、MaaSの実現に向けて、マイクロソフトは自動車業界に何を提供していくのか。
そのベースとなるマイクロソフトが提唱するデジタルプラットフォームの基本形を示したのが図2である。
「インテリジェントクラウド」と「インテリジェントエッジ」からなるこのプラットフォームは、インターネットにつながったさまざまなデバイス、つまりエッジから日々膨大なデータが発生し、クラウドに送られている。
そのデータを最大限活用するために、クラウドもエッジもインテリジェント化されていく。そのインテリジェント化は、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、図2では「ユビキタスコンピューティング」「人間中心のエクスペリエンス」といった技術領域によって進化を遂げていく──というのが、マイクロソフトによるデジタルプラットフォームの基本的な考え方だ。
この考え方に基づいてMaaSを支えていくのが、マイクロソフトの役どころとなるわけだ。
データビジネスで「競合しない」理由
ではここから、ラビ氏の説明をもとに、自動車業界のDX支援に向けたマイクロソフトの具体的な取り組みを見ていこう。まず、同社はこの取り組みにおいて、次の3つの指針を掲げている。
第一に、「マイクロソフトは自動車業界全体のパートナーとして事業を展開する」。同社が車両の製造やエンドユーザー向けのモビリティサービスを提供することはない。つまり、「競合しない」ということだ。
第二に、「データの所有権は顧客である自動車業界にある」との認識だ。データから得るインサイトが自動車業界の新たな収益につながるからだ。つまり、「マイクロソフトが顧客のデータを収益化することはない」ということだ。
第三に、「マイクロソフトは自動車関連企業が独自のブランド体験を強化し、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を拡大できるように支援する」。つまり、「ブランドや顧客体験は自動車関連企業のもの」ということだ。
競合とは異なるテクノロジーパートナーとしての立ち位置
ラビ氏は上記の3つの指針について、「テクノロジーパートナーとしての立ち位置をここまで明確に示しているのは、当社だけだと認識している。だからこそ、深い信頼を得ていると考えている」と語った。
この3つの指針こそが、マイクロソフトが自動車業界のDXを支援するITベンダーとして関連企業に広く認められる所以なのだろう。
こうした3つの指針のもと、マイクロソフトは自動車業界のDX支援に貢献するテクノロジーの活用分野として、図3に示すように「コネクテッドカー」「自動運転車の開発」「スマートモビリティ」「マーケティング、セールス、サービス」「コネクテッドファクトリー」「新技術」の6つを挙げている。
【次ページ】競合とは異なるテクノロジーパートナーとしての立ち位置
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