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貧しくなる日本をどうするか、という質問に、日本がイヤになったら移住すればいいとちゃぶ台返しをする社会学者の古市憲寿氏と、現実的な改善策を提案する元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏との考え方は対照的だ。ひろゆき氏が積極的に提唱しているベーシックインカムは、日本再生の切り札になるか? 古市氏はベーシックインカムに対してどのような考えを持っているのか? 2人にポスト平成、令和時代の日本社会について語ってもらった。
編集協力:斎藤哲也、編集:小倉 碧、聞き手:松尾慎司、写真:稲垣純也
編集協力:斎藤哲也、編集:小倉 碧、聞き手:松尾慎司、写真:稲垣純也
日本はどんどん貧しくなる
――前回はお2人それぞれの「お金との付き合い方」についてお聞きしました。今回は、日本社会という視点でお話をお聞かせください。
ひろゆき氏:日本がこれからどんどん貧しくなることは目に見えてますよね。今だって、日本の3割以上の世帯が貯蓄ゼロだから。雇用も非正規雇用が増えるばかりだから、給料も大してあがらない。
古市氏:一人当たりGDPのランキングも世界で20位。企業の時価総額ランキングでも、日本企業はトップ30に一社も入っていない。他の国が成長するだけで日本だけがその波に乗れなかったんですよね。
これからの日本は働かない人が増えたほうが利益が上がる
――ひろゆきさんは、以前からベーシックインカムについて積極的に発言していますよね。
ひろゆき氏:僕は大賛成です。僕自身も月7万円ぐらいのベーシックインカムがあれば食べていけるし、そもそもこれからの日本は、働かない人が増えたほうが利益も上がるんじゃないかと思っています。
たとえば新海誠のコンテンツって、当たるとめちゃくちゃ利益率が高いですよね。それに比べて、NECや日立、東芝といったメーカーが作っている製品って、中国も同じようなものを作っているから、利益率が低いなかで削り合いをすることになる。優秀な技術者を集めて工場を作っても、フタをあけてみたら赤字だったというのもよくある話です。
赤字って、要するにビジネスとしてはやらないほうがよかったということでしょう? 残念なことだけど、多くの人が頑張った結果、やらないほうがよかったということが、現代のモノづくりにおいては起こってしまう。それよりも、世界でもあまり競争相手がいないようなことをやっている人のほうが利益率は高いんだから、そちらを増やしたほうが社会にとっても利益があるんじゃないのかと思うんです。
古市氏:でも、これまでだってベーシックインカムがなくても、新海誠のような人がたまに出てきてますよね。
ひろゆき氏:僕がニコニコ動画をやってたときは、すごい時間をかけて作ったような動画がちょこちょこ出てきたんです。そういう人って、蓋を開けると大学生やニートが多い。作詞作曲した曲をアップして、そのあとプロになりましたという人もけっこういます。
ああいう人たちを見ると、人間ってある程度自由な時間がないと、モノづくりをしたいと思ってもできない。能力があるけど、食うために社会人やってますという人は、ベーシックインカムで最低限の生活を保障して、自分のやりたいことにエネルギーを傾けてもらったほうが、最終的にはアウトプットが多いんじゃないかな。
古市氏:そういう才能のある人を、あらかじめ選別して育成するようなシステムじゃダメですか。
ひろゆき氏:その場合、選別する人のセンスで物事が決まってしまうんですよ。誰も価値を感じない面白いものが出てきた場合、選別する人がそれをわからないと、切り捨ててしまう。しかもやっぱり現在だと、資本主義の価値観で社会がまわっているから、お金の匂いに敏感な人が選別する人になりやすい。お金の匂いがするものって、どこか他の国でも思いついてやるんですよね。だからあまり選別せずに、社会保障で好きなことができるようにしたほうがいいと思う。
古市氏:日本全体でもそうなりますかね。
ひろゆき氏:たくさん稼いでいる人からは、税金も多くとれるじゃないですか。みんながみんな一生懸命働いても、赤字だと税金がとれない。それなら超稼げるおかしな人をポコポコ作るほうが、結果としてはうまく回るんじゃないかな。
古市氏:もうそれを国の方針にするわけですか。
ひろゆき氏:今のところ、そういう方針でモノやコンテンツをつくっている国ってないでしょう。欧米圏だって基本的には会社でうまく回していくわけです。そうなると、めちゃくちゃ頭の良い人がグーグルのような会社に入って、世界中の頭の良い人同士で戦うことになる。日本人ってそんなに頭が良くないので、これは勝負としてキツい。それなら頭の良い人がやらないところで戦うほうが、結果的には利益率が高くなる気がします。
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