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  • 2012/03/21 掲載

日本企業のBCP対策に5つの課題:5つの調査レポートで明らかに

取り組み事例集も続々

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東日本大震災から1年を経て、BCP(事業継続計画)に対する機運が高まるとともに、導入や見直しに関する検証を行った調査結果が数多く報告されている。世界的にみても2011年は地震や台風、津波などの自然災害に加え、民主化運動に伴う政情不安、ユーロ圏の経済問題など、企業の事業継続性をおびやかす材料が目白押しだった。本稿では2012年2月以降に発表された5つの調査レポートからあぶり出された日本企業の課題と、その解決策のヒントを紹介する。

課題1:9割の企業がBCPに問題を抱える

 まず紹介したいのが、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2011年10月末から11月末にかけて、1039社に実施した「企業IT動向調査2012」のうち、2月22日に発表された「BCP」に関連する速報値だ(発表PDF)。

 これによれば、有効回答990社のうち、直接の被害を受けた企業は37.1%、間接の被害を受けた企業は22.9%だった。被害を受けた企業のうち、地震などの自然災害に対するBCPを策定していた企業(411社)に、BCPが機能したかどうかを尋ねたところ、「十分機能した」と回答した企業は11.7%、「おおむね機能したが、問題はあった」との回答が54.7%、「ほとんど機能しなかった」が33.6%となった。66.4%は何らかの形で効果があったとの見方もできる一方で、9割弱が問題を抱えており、見直しが必要とされていることが明らかになった。

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東日本大震災の被害状況
(出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))

画像
BCPの機能状況
(出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))


 さらに同レポートでは、BCPをそもそも策定済みの企業が半数に満たないことも明らかになっている。BCPを策定済みとする割合がもっとも多い「システム障害」でさえ、46.2%に過ぎず、他の項目は軒並み2~3割程度しか策定済みになっていない。風評被害やテロ、サイバーテロに至っては、13%前後だ。

photo
想定されるリスク別に見たBCPの策定状況
(出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))


 では、限られた企業リソースの中で、何に取り組むべきなのか。IT-BCPの視点で、IT部門が対策が必要と考えているのが、「多くのシステムが1か所に集中している」ことだ。その割合は回答企業の実に61.4%にのぼる。システム統合や単体の効率を追求したことがあだになっていると言えよう。それに加えて、「広域の電源遮断により既存のバックアップが機能しなくなる」が37.4%、「直接の被災地でなくても影響を受ける」が36.4%と、計画停電などの影響が如実に表れる結果となった。

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東日本大震災を機に認識した、IT部門で対策が必要とされるリスク(複数回答)
(出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))


 同レポートでは最後に、IT部門がBCP策定を見直す場合のポイントを紹介している。導入済みの割合が高い順で見れば、「外部データセンターの活用」、「ネットワークの多重化」、「自家発電設備の設置または増設」「バックアップセンターの準備」が続いた。特に特筆するべきポイントとしてあげられるのが、「クラウド・コンピューティングへの転換」を「検討中」の企業が38%にのぼり、最も高い割合を示した。

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BCPの策定・見直しのポイント
(出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))


課題2:首都圏にデータセンターが集中

 その一方で、IDC Japanが2月22日に発表した『国内データセンターアウトソーシング市場 地域別予測』によれば(発表サイト)、関東地方のデータセンターのシェアは72.3%(23区内では34.5%)に達するなど、一極集中が続く。同調査によれば、首都圏以外のデータセンターを利用することに関心が高まっているものの、大規模なデータセンターの新設は依然として首都圏内で件属しており、高い成長水準が続くという。

 その一方で、北海道、中国地方、九州などでも本格的なデータセンターの拡張が始まっており、今後こうした地方型データセンターの活用も視野に入れておく必要があるだろう。

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国内コローケーション市場 データセンター所在地別 売上額予測:2010年~2015年
(出典:IDC Japan)


課題3:海外事業所、現地法人のBCPが策定されていない

 続いて紹介したいのが、インターリスク総研が3月9日に発表した『東日本大震災から1年 ~企業のリスクマネジメントに求められたもの~』だ(発表サイト)。このレポートでは、ライフラインや企業の被害状況、計画停電、帰宅困難者対応、インフラなど、東日本大震災の被害状況の総括が把握できる。

 同資料でも企業のBCP策定状況に関する調査結果(2011年8月から9月、432社を対象に実施)を発表しているが、この結果でもBCPを策定しているとする企業は30.3%に過ぎなかった。一方で策定していないという企業は、2010年7月調査の40.7%から31.3%へと大きく減少している。策定意向を示す企業が大きく増加していることがみてとれる。

BCP策定状況
2011年8~9月調査2010年7月の調査増減
策定している30.3%29.5%+0.8
現在策定中である23.1%28.8%+9.3
策定する計画がある15.0%
策定していない31.3%40.7%-9.4
無回答0.2%1.0%-0.8
(出典:インターリスク総研)

 本調査の中で特に注目したいのが、「海外事業所、現地法人におけるBCP策定の必要性」だ。「必要である」とする企業が67.1%で、「必要はない」(18.4%)、「無回答」(14.5%)を大きく上回る一方で、「中国」の84.3%、「アジア諸国」の81.9%、「北米」の77.6%、「欧州」の71.9%で、「BCPを策定していない」ことが明らかになった。海外事業所を持つ企業に限った調査だが、海外オペレーションにかかわるBCPには大きな不安を残す結果となった。

海外事業所/現地法人におけるBCP策定有無と策定方法[複数回答]
地域策定していない海外事業所/現地法人にて
独自に作成した
日本国内事業所で作成した
BCPを参考にした
その他・無回答
中国84.3%4.8%9.0%3.0%
アジア諸国
(除く中国)
81.9%2.7%14.1%2.7%
北米77.6%6.5%13.1%3.8%
欧州71.9%7.8%18.8%3.1%
(出典:インターリスク総研)

【次ページ】BCP関連予算と注目するべき事例
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