あずさ監査法人 ビジネス・アドバイザリー事業部 マネジャー 牧野敬一朗氏 インタビュー
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東日本大震災を境にして、多くの企業の間で、在宅勤務制度への関心が高まっている。交通機関のマヒにより従業員がオフィスに出勤できない場合や、停電・節電対策の一環としてオフィスが使用できなくても、ITを使って自宅にいながら業務を行う在宅勤務は、企業のBCP(事業継続計画)の観点からもメリットが大きい。在宅勤務の導入は、どのようにして行っていくべきか。あずさ監査法人の牧野敬一朗氏に話を伺った。
人事上、制度運用上の課題に対して準備をしておかなければ、効率的な在宅勤務の導入は難しい
在宅勤務が注目されている背景として、東日本大震災以降の企業のBCP対策や節電対策に加えて、従業員のワークスタイルの多様化があると、あずさ監査法人 ビジネス・アドバイザリー事業部 マネジャー/公認情報システム監査人の牧野敬一朗氏は語る。
「正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトといった雇用形態の多様化、フレックスタイムや短時間勤務など勤務形態の多様化が進んだことで、働き方に対する考え自体が多様化してきています。そうした中で、必ずしも職場という環境に囚われず、仕事ができるのであれば、会社の外で仕事をしても良いのではないか、という考え方が、多くの企業の間で広まっているのではないでしょうか」
在宅勤務制度の導入は、日本よりもアメリカやヨーロッパの国々の方が先行している。中でも「テレワーク先進国」とされるアメリカは、国土の広さという要因もあって、すでに在宅勤務がワークスタイルとして定着していると言われている。
「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)などによって、従業員個人の仕事が明確に定義されている欧米では、仕事の範囲と評価方法が明らかにしやすいこともあり、在宅勤務が導入しやすかったという側面もあると思います。在宅勤務を導入するに当たって、従業員の方々の要望を受けて在宅勤務を導入するケースと、トップダウンの判断で導入するケースの二つがありますが、海外の場合は前者のケースが多いようです。逆に現在の日本ではBCP対策やコスト削減に代表されるようにトップダウンで決定されるケースが多いため、いかに従業員に配慮した環境を構築できるかが、在宅勤務導入の鍵と言えます」
東日本大震災以降、日本の企業でも在宅勤務の導入が進められているが、そうした企業の多くは、以前から在宅勤務を一部導入していた。その一方で、十分な備えのない「なし崩し的」な導入も見られる。しかし、事前にしっかりとした準備と対策がなければ、企業側、従業員側の双方に混乱が生じてしまう結果になりかねないと牧野氏は指摘する。
「在宅勤務を導入した際に、従業員の労働時間をどのように管理するのか、また業務の成果をどのように評価するのかという人事制度上の課題が生じます。また、従業員同士のコミュニケーションなど、在宅勤務の運営においても課題があります。一方で、従業員の作業環境や通信環境の整備についても問題があります。これらの課題に対して事前に十分な準備をしておかなければ、効率的な在宅勤務の導入は難しいでしょう」
【次ページ】効率的な在宅勤務の導入のために不可欠なこととは?
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