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- 2010/03/08 掲載
意思決定権者の心を揺さぶる解決策の提示:新規案件を獲得する運用管理ケーススタディ(4)
トーマツイノベーション 安達 裕哉氏、磯上 直人氏
「解決策の提示」のポイント(1)だれに提案するのか
解決策を提示する際のポイントは3つあります。それは「適切な人」に、「適切な解決策」を、「適切な方法」で提案することです。
それでは「適切な人」とは一体だれでしょうか。先に答えを明かすと実質的に意思決定をする人です。提案を受ける側の立場で考えてみればわかります。提案内容を受けて、発注先を決定するにはさまざまな人が関わっています。それらの利害関係者を4つに分類すると表1のようになります。
表1 意思決定に関わる利害関係者 | |
タイプ | 特徴 |
調査者 | 情報を収集・分析して、決定者に報告する。意思決定はできない。 |
アドバイザ | 第三者的な立場でアドバイスを行う。意思決定の権限・責任を持たない。 |
決定者 | 評価者の報告、アドバイザの意見等を元に意思決定する。承認者に承認をもらう。 |
承認者 | 決定者の意思決定を承認・否認する最終責任者。 |
「調査者」は現場での窓口となっていることから接点も多いですが、残念ながら権限がありません。「調査者」から「決定者」に推薦してもらうことも可能ですが、「調査者」の意見は参考程度にしか扱われないことが多いため、あまり期待することはできません。
また、「承認者」の多くは「決定者」からの意見なしには決められません。特に、「承認者」の下に優秀な部下がいる場合は、「承認者」による承認は単なる形式上の手続きとなります。そのため、「承認者」にいくらアプローチしても、「決定者」の意見次第で結論が覆ることがあります。
「決定者」は意思決定をする権限と能力を兼ね備えています。したがって、提案する側にとって最も重要な利害関係者は「決定者」となります。
残る「アドバイザ」は、意思決定の権限・責任を持たないため軽視されがちですが、実は意外に重要な利害関係者です。「アドバイザ」は、専門性や政治的側面から、「決定者」の意思決定に大きな影響力を持ちます。「アドバイザ」が否定的である場合は、横槍で意思決定が覆る可能性があります。そのため、否定的意見を持ち、影響力のある「アドバイザ」については、事前の根回しが必要になります。
このように4つタイプに分けてみましたが、そもそもどのように「決定者」を見極めればよいのでしょうか。一番簡単な方法は窓口担当者(調査者)に聞くことです。ただし、その聞き方にはコツがあります。
「導入を決めていただくにあたり、どなたにご提案したらよろしいでしょうか」と、窓口担当者に聞くとどうなるでしょうか。あからさまに「意思決定者はだれですか」とは聞いていないものの、決定権のない窓口担当者は相手にしないということを暗に意味してしまい、その担当者のプライドを傷つけてしまいます。そうすると、意思決定者に推薦してもらうことはおろか、紹介してもらうことすら期待できなくなってしまいます。
このような場合に営業マンが良く使うのが、次の一言です。「次回は、本提案をしたいと思いますので、私の上司を連れて参ります。」実は、この一言はなかなか効果があります。「相手は上司に吊り合う相手を連れてこないといけない」と思うからです。次回登場するのは決定者であることが多いでしょう。他にも、「この提案の選定はどなたと行うのですか」「(窓口担当者の)部署はどういう組織を教えていただけませんでしょうか」「今回の発案者はどなたですか」などがあります。ポイントは、窓口担当者のプライドに配慮することです。その他にも、多少時間はかかりますが、協力的な担当者の場合は「一緒に上司に提案しましょう。」と巻き込んでしまうのも効果があります。
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