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  • 2009/02/26 掲載

地域WiMAXとは何か?地方における情報格差是正のキーテクノロジー【2分間Q&A(50)】

2009年度の実用化に向けて

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地域WiMAXとは、ブロードバンドの整備が進んでいない地方において、デジタル・デバイド(情報格差)を解消するために総務省が主導で推進している次世代無線通信だ。2008年3月から免許申請の公募が開始され、2009年度の実用化に向けて動き始めている。今回は、間近に迫る地域WiMAXの動向と、将来性について解説する。
執筆:池田 冬彦

地域WiMAX登場の背景とは?

 日本は、全国津々浦々に張り巡らされた光ファイバーケーブルによって、世界でもトップクラスのブロードバンド先進国となった。だが、収容局から自宅、事業所への回線は未だにメタリックケーブルのみ、という地域もまだまだ多い。自宅から最寄りのISPまでの回線部分は、俗に「ラスト・ワンマイル」とも呼ばれているが、ここで光ファイバの敷設コストを回収するには、加入者負担で敷設せざるを得ない。このため、比較的人口の少ない地方エリアでは、どうしても敷設が遅れがちだ。

 光ファイバーが利用できないエリアでは、ADSLしか選択肢がない。だが、地方エリアでは、収容局の数自体が少なく、都市部のように密に配置されていない。このため、収容局から自宅/事業所までの距離が伸びがちになる。

 ADSLは、距離が長くなるほど信号の減衰によって通信速度が落ち、高速なブロードバンドを利用することが難しい。CATV(ケーブルテレビ)を利用する手もあるが、CATV事業者も人口の集中するエリアを中心に展開しているため、人口の少ないエリアでの利用は難しい。

 この問題を解決するための切り札が「地域WiMAX」だ。地域WiMAXは、2004年頃に総務省の「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」で地方のデジタル・デバイド解消のための方策として議論され、有線通信を代替するWiMAX無線方式でエリア全体をカバーする、という方針が打ち出されたものだ。

図1 従来のブロードバンドと地域WiMAXの違い

※クリックで拡大
図2 総務省が提唱する地域WiMAXの利用シーン

※クリックで拡大

地域WiMAXの仕様とは?

 このプランで採用されるWiMAXは、広帯域無線通信規格の国際基準である「IEEE802.16」に基づくもので、WiMAXは、NTTドコモなどの通信事業者が推進している「LTE(Long Term Evolution)」と同じ、3.9Gの高速データ通信規格である。規格上の最大通信速度は上り/下り共に75Mbps。基地局がカバーする範囲はおよそ10kmとなっている。

 WiMAXの周波数帯は日本では2.5GHz帯(2545MHz~2625MHz)が割り当てられる。そのうち、2545~2575MHzはウィルコムの次世代PHS(XG-PHS)用の帯域として割り当てられ、2595~2625MHzはKDDI系列のWiMAX事業者「UQコミュニケーションズ」に「全国WiMAX」として割り当てている。これら2つの領域を「全国バンド」として定め、これらの帯域の中間にある10MHzの帯域を地域WiMAX用に割り当てている。

図3 主要な無線データ通信の規格
世代規格採用事業者(予定も含む)周波数帯域最大速度(下り)最大速度(上り)
3.5GEV-DO Rev.AKDDI1.25MHz3.2Mbps1.8Mbps
3.5GHSPA(HSDPA/HSUPA)NTTドコモ、イーモバイル、ソフトバンクモバイル5MHz14Mbps5.7Mbps
3.9GUMB未定1.25/5/10/20MHz288Mbps75Mbps
3.9GLTE NTTドコモ、イーモバイル、ソフトバンクモバイル1.25/5/10/20MHz326.4Mbps86,4Mbps
3.9GWiMAXUQコミュニケーションズ、地域WiMAX事業者5/10MHz75Mbps75Mbps

 この10MHzの帯域への免許は、市区町村単位でのサービス展開を行う事業者に交付される。また、同一市区町村の中で複数の事業者が免許を受けることは可能であるが、サービスエリアがお互いに重なってはならないという決まりがある。また、市区町村をまたがった形でサービスを展開することは可能だが、都道府県全域をカバーするサービスは認められない(都道府県の一部であれば可)。

 現状では、地方CATV事業者の申請が圧倒的に多いが、事業者にとっては自社の管轄地域でのインターネットサービスの拡大というメリットが得られる。特に、CATV事業者にとっては、ケーブル敷設にかかるコストや設備の維持費用を考えれば、地域WiMAXでエリア拡大を図った方が投資効果が高く、維持コストも有線より低く抑えられる。

 ちなみに、地域WiMAXでは、無線設備の整備が終了していなくても交付される「予備免許」制度がある。予備免許はいわば「仮」の免許であり、6ヶ月以内に無線設備を整えて「落成検査」を受けた後、正式な免許を交付される。

図4 WiMAX用に割り当てられた周波数帯域

※クリックで拡大


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