- 会員限定
- 2024/03/28 掲載
ベトナム最大LCC「ベトジェットエア」の強さのワケ、コロナ後に最大成長の秘密
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
ベトナム最大の民間航空会社、ベトジェットエアとは
ベトジェットエアは、コロナ禍を経て再成長軌道に乗った。航空データ分析のOAGによると、アジア太平洋の航空会のうち2019~2023年に航空路線のキャパシティが最も増えた航空会社は、同社だったという。同社を日本のLCCに例えると、その翌年就航したピーチアビエーション(ピーチ)に近い。就航開始年(2011年)が近いだけでなく、機材の導入や路線開設を素早く実現させる実行力は似ている。
一方成長の速度は、ベトジェットエアがピーチより早い。同社の輸送力は、ピーチの2倍以上、保有機数もピーチの29機に対して同社は84機と2.8倍だ。
ベトナムは国土が細長く、鉄道や高速道路網も未発達なことを考慮すると、航空機での移動はまだまだ成長が見込める。世界で見ると、年間1088万席が用意されたハノイとホーチミン間が、国内空港間輸送力で世界4位だ。
ベトナム航空業界の勢力図
ベトナムの航空業界を見てみよう。1956年にベトナム政府の民間航空局としてベトナム航空の歴史が始まり、長く独占体制が続いた。同社は今年日本就航30周年を迎える。一時期、バンブー・エアウェイズは日本にも就航し、ベトナム第3の航空会社としてベトジェットエアのライバルになるはずであったが、コロナ禍によりダメージを受けた。現在同社は、ベトナム国内だけに規模を縮小して何とか経営を続けている。今回の取材期間中にも100人以上の客室乗務員がバンブー・エアウェイズからベトジェットエアに転職したと聞いた。
ベトナム航空とベトジェットエアの輸送力(有償旅客キロ・RPK)をコロナ禍前から比較した。2017年には両社の差が大きくついていたが、最新の2022年でベトジェットエアがベトナム航空の輸送力を抜かした。この先もこの差は開いていくだろう。
2017年に大きな差がついた理由として、ベトジェットエアは、2016年と2018年にボーイング737max型機を100機ずつ、計200機も発注したことがある。また、同社最大機数のA321型の納入残機数は108機もある。対するベトナム航空は2023年11月に、ボーイング737Max8を50機発注した。このように、発注機材数の差は歴然だ。
ベトナムのように、アジアにおいて伝統あるフルサービスキャリアの輸送実績を超えてLCCが台頭した事例があるかどうかは、アジアで最初のLCCであるエアアジアのあるマレーシアが1つのベンチマークになるだろう。
コロナ禍前の2019年実績で、エアアジアはマレーシア航空の輸送力を抜いて国内1位だった。しかし、コロナ禍の影響を受けて、2022年実績ではマレーシア航空に輸送力を抜かれている。
ちなみにアジアLCCを比較すると、ベトナムはインド、インドネシア、タイに続く輸送力を誇る。 【次ページ】べトジェットエアの快適すぎるsky BOSSサービス
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR