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1月2日に発生した、羽田空港でのJALと海上保安庁の機体衝突事故から3週間以上が経過した。事故により、海上保安庁の機体に乗っていた5名の死亡が確認された。多くの報道で原因特定と対策が報じられたが、最終的には運輸安全委員会(JTSB)の調査結果を待つこととなる。今回の事故発生において、JALの赤坂 祐二社長の記者会見での発言にあったように、「航空管制はアナログな部分が多く不安要素は拭い切れない」と多くの人が思ったのではないだろうか。航空機の安全運航のためのテクノロジーや、再発防止のために取り組むべきことについて解説する。
なぜ航空機の衝突事故は発生したのか?
なぜこのような衝突事故は発生したのだろうか。特に、複雑な運航形態をとる航空機の事故の発生要因は、1つではなく、複数要因によるものだろう。管制と2機の航空機間での明確な交信と、航行援助機器を使用した上での目視を徹底すれば、滑走路への誤進入を防ぐことができたのではないか。
海上保安庁乗務員の死亡事案のために、並行して警視庁における捜査が始まっている。日本の現行法のもとでは、刑事責任の追及に動くことは避けられない。
一方、世界の航空事故調査の主流は再発防止に焦点を当てている。この事故は単なる個別の過失だけでなく、関与した機関や部署の行動や手順にも根本的な問題がある可能性がある。したがって法改正も必要であり、調査の目的は将来の同様の事故を未然に防ぐためにシステム全体の改善を図ることも行うべきだ。
空港に設置すべき4つのシステム
では、どのようなシステムが有用だろうか。まずは、空港に設置するテクノロジーを考える。
・航空機ストップバー灯システム(STBL)
着陸機がある場合に地上滑走する離陸機が滑走路に誤進入することを防ぐことができるシステムだ。東芝プラントシステムが製造している。羽田空港の当該C滑走路に進入する誘導路上には2001年には設置済みのため、衝突当該時刻に作動していなかった理由を明確にすべきだ。
同社には、センサー利用の航空灯火で誤進入・誤出発を防止する滑走路状態表示灯システム(RWSL)もあり、併用することでより安全性は向上していたはずだ。
また、この運用停止は航空任務通知(NOTAM)が発信されており、海保機でも周知していたはずのものである。
・マルチラテレーション(MLAT)システム
空港面2次レーダーシステムで、夜間・悪天候時など管制からの視界が悪い状況でも、航空機の位置を正確に把握することができる。安全かつ効率的な航空管制を行うことが可能な本製品は、日本の8空港で導入されているものの、今回の羽田空港事案では効果的に機能を発揮できたとは言い難いことから、管制官への認知機能を向上させる必要がある。
・滑走路進入防止システム(RIPS)
NASAでも研究が進められる地上レーダーと警報を利用して、パイロットと管制官に進入の可能性を警告するシステムである。
・先進型地上走行誘導管制システム(A-SMGC)
2007年より電子航法研究所にて行われている監視機能強化の研究であり、 監視 、管制、 経路設定、 誘導を総合的に司るシステム全般のことをいう。
これらのシステムの複合利用も考えられるところであることから、導入の検討を行うことが必要だろう。
航空機に搭載すべき4つの装置
続いて、航空機に搭載すべき4つの装置を考える。
・ADS-B
GPS信号を使い常時位置・高度を発信する装置だ。FAAやEASAなど欧米航空局では、定期輸送航空機には搭載義務があるが、今回の海保機には装備されていなかった。各メーカーから多くの器材が販売されており、装置本体と設置を行うのに日本円で100万円あれば済む。日本1混雑する空港に就航する条件として、同機器の搭載を義務付ける必要があるのではないか。
・滑走路認識および勧告システム(RAAS)
パイロットの状況認識を向上させ、滑走路進入のリスクを最小限に抑え、運用コストを削減する貴重な安全ソリューションである。ハネウェルの製品だ。
・機内空港ナビゲーションシステム(OANS)
ナビゲーション・デイスプレイ(ND)上に空港ゲート、ランウエイ番号、誘導路、自機の位置を明示するシステムだ。使用中のランウエイは、黄色の点滅で表示され誤進入を防ぐことができる。エアバス機に装備可能なタレス社の製品だ。
・ヘッドアップディスプレー(HUD)
HUDに、拡張ビジョンシステム(EVS)や合成ビジョンシステム(SVS)が装備されていれば、夜間や悪天候下でも精度高く滑走路上の機体を認識できた可能性がある。報道でも、JAL機は海保機を視認できなかったとのことだ。
【次ページ】再発防止のために取り組むべき5つのこと
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