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  • 2019/07/12 掲載

Society 5.0で加速する「デジタルガバメント」、クラウドこそが成否の鍵だ

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IoTやAIなどの新たなデジタル技術の利活用は待ったなしの状況にある。そうした中、新たな社会の在り方として注目を集めるキーワードが「Society 5.0」だ。Society 5.0の到来により、社会はどう変わるのか。また、そのためにどのような変革が求められているのか。国内外の政府のデジタル化に深い知見を持つ、内閣官房の座間 敏如氏とアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ワールドワイドパブリックセクター 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見 潮氏の2名が、新しい未来と政府の今後の展望について語り合った。

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内閣官房
IT総合戦略室 政府CIO上席補佐官
座間 敏如氏

Society 5.0に向けた行政の「在るべき姿」とは

 日本の再興に向け、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」の目標に掲げられた「Society 5.0」。さまざまな形で語られるこの言葉だが、その意味するところは現在の情報社会(Society 4.0)と比較すると分かりやすい。

 注目すべきは“人”の在り方だ。両者の一番の違いは、Society 5.0では情報活用の主体が人からAIに置き換わり、人がAIの生み出す各種サービスの“受け手”になることだ。

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これまでの情報社会(4.0)とSociety5.0

 政府のデジタル化に長年にわたって携わってきた内閣官房 IT総合戦略室 政府CIO上席補佐官 座間 敏如氏(以下、座間氏)は「行政サービスも必然的に民間サービスに組み込まれます。そして、あらゆる人がネットワークを通じてサービスを享受できることで、誰も取り残されない安心・安全な社会を実現する。そんな姿を目指しています」と、その意義を説明する。

 ただし、Society 5.0の実現には厄介な課題も残されている。それが「デジタルガバメント」に代表される、デジタルを前提とした行政自体の在り方の問題だ。グローバルで見ると、デジタルガバメントの議論は2010年ごろにまでさかのぼる。当初の議題は電子化による効率化などの行政コスト削減であった。

「しかし、2015年前後から、『行政だけでは行政サービスのすべてをまかないきれない』という議論が欧州を中心に盛んになりました。実はこの指摘は、極めて的を射たものです」(座間氏)

 すべてをまかないきれない以上、行政だけで維持が困難なサービスは民間の助けを借りる必要がある。では、それはどのような姿で実施されるべきなのか。

 かつて直面したことのない問いかけへの適切な回答が、Society 5.0の推進に向けて、行政サイドに強く求められているのである。

クラウドへの最大の期待は「行政イノベーションの創出」

 「行政の在り方」は、費用対効果や各種政策、地方分権といった多様な観点から語られてきたが、簡単には答えの出ない問題だ。アマゾン ウェブ サービス ジャパンの宇佐見 潮氏(以下、宇佐見氏)も「デジタルガバメントは、政府や行政の内外だけでなく、社会全体を巻き込むテーマです」と述べる。

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アマゾン ウェブ サービス ジャパン
ワールドワイドパブリックセクター 執行役員 パブリックセクター統括本部長
宇佐見 潮氏

 一方、座間氏は「デジタル化する社会への対応、すなわちデジタルガバメントに向けた取り組みは着実に進んでいます」との見解を示す。同氏がその一例として挙げたのが、引越しのワンストップサービス実現に向けた一連の取り組みだ。

 従来、引越しをする際には、自治体への転出/転入届のほか、電気、水道やガス会社などへの利用/休止届、各種サービスにおける住所変更など、同一内容の連絡が何度も必要とされてきた。

 この不便さを解消すべく、政府が、内閣官房IT総合戦略室を中心として、関係省庁や自治体、さらに引越し業者や金融機関、クラウドベンダーなどを巻き込むことで、行政だけに留まらない手続全体のワンストップ化に向けたプロセス策定やシステム化を推進してきたのだ。座間氏は前述のステークホルダーが一堂に会して議論するワークショップ方式を導入し、相互理解を深めながら共に課題解決に取り組むという、これまでにない進め方を推進している。

「中央(省庁)は現場の細かな現状や課題までは把握できていません。ワークショップを通じて我々内閣官房職員や政府CIO補佐官が、省庁だけでなく関連組織にも正しい現状認識を共有できるよう努めています。その意義は、すべてがシームレスにつながることが前提のデジタル化において、決して小さくありません」(座間氏)

 では、IT分野で日本の先を行く米国の状況はどうか。宇佐見氏によると、デジタル化の指針としての米国政府のクラウド支出は、近年になり右肩上がりで増加中だ。2017年の支出額は2013年比で12倍も増え、政府予算に占めるクラウド支出割合も2018年には8%まで到達した。背景には、クラウドをコスト削減のためだけでなく、「民間並みのイノベーションを誘起するためのツール」と捉える政府の考えがあるのだという。

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米国の政府予算に占めるクラウド支出割合は、2018年は8%に達した

「行政システムの最大の問題は、レガシーであるが故に技術やサービスの進化から完全に取り残されていることです。この状況を顧みれば、Society 5.0の達成に向け、行政システムをクラウドならではのイノベーションのエコシステムに参加させる重要性は明らかです。それこそ、我々がクラウドに最も期待していることなのです」(座間氏)

クラウドでシステムの主導権を行政に取り戻す

 より早期のイノベーション創出に向けて、座間氏が必要性を訴えたのが、「小さくてもいいので、できる限り早く、行政機関が認めるサービスをクラウド上に生み出す」ことだ。海外の成功事例に対する中央省庁の関心は現段階ではどこか他人事のようなところがあるが、身近な存在の他省庁や自治体となれば「なぜうちではやっていないのか、という話になります」(座間氏)。

 実はこの提案は、過去の政府共通システムでの反省に基づくものでもあるという。このときは失敗時の分析や対策がきちんと議論されず、その結果、使えるようにするための改修に長い年月を要した。

 もし、世の中に数多ある一定水準の品質を満たすサービス利用を政府が認めれば、失敗時にも代替が利く。また、自然淘汰(とうた)のメカニズムが働き、良いものだけが選別されてイノベーションの加速も期待される。移行アプローチも、アプリケーションの作り替え以外にいくつも用意されることとなる。

 ただ一方で、デジタルガバメントの推進にあたっては、行政組織ならではの根深い課題も残されている。たとえば、「クラウドの従量課金体系は、行政になじみにくい」(宇佐見氏)との指摘もその1つだ。単年度ごとの予算ありきの考え方では、クラウドの継続的な利活用は困難というわけだ。

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 対して座間氏は、巨大な既存行政システムの存在と、その運用に膨大なコストを負担しており、行政組織側の選択肢が限られている点を課題として指摘した。その上で、最優先に取り組むべきこととして「システムの主導権を取り戻すこと」を挙げる。事実、これまでの行政システムはベンダーに多くを一任してきた。

「主導権を取り戻すには、ベンダー任せで文句を言うだけではだめです。やはり我々行政が自分たちでしっかりと考え、手を動かし、汗をかくことが必要です。クラウドの登場で、ユーザ自らサービスを企画し、開発し、提供することのハードルは大きくさがりました。そのための行動を起こすタイミングが到来したと考えています」(座間氏)

エコシステムを見直し、デジタル化をリードする気概を持て

 イノベーションのヒントとして宇佐見氏が紹介したのが、アマゾンでのイノベーションの創出活動である。アマゾンでは次の方程式のもとでユニークなサービスを産みだしたと話す。

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イノベーションの方程式

「イノベーション=先端技術導入と捉えられがちですが、それは大きな誤解です。技術はたしかに重要ですが、成果の極大化ではどれだけ“べき乗”できるかがより大切です。その点で我々は組織文化として“紙”にとことんこだわっており、まずは顧客体験の向上に技術がどれほど寄与するかを徹底的に机上で詰めます。そこで成果を認めて、初めてPoCに取りかかれるのです」(宇佐見氏)

 座間氏もこの点には賛意を示す。すでに述べた引越しのワンストップ化の取り組みも、顧客体験のストーリーを可視化し、何が市民にとって負担となっているかを洗い出すことから始めている。

「行政サービスであるため皆さんの目に触れるような宣伝はできませんが、これまでの活動も同様の視点を取り入れています。サービス向上の観点で事前に問題点を徹底的に洗い出すことは極めて重要です」(座間氏)

 Society 5.0に向けた行政システムの変革は、これからが本番だ。その早期達成に向け、座間氏は国内ベンダーに対して次のような期待を寄せる。

「アマゾン ウェブ サービスはすでに日本でも無視できない存在です。これを踏まえて国内ベンダーにぜひ考えてほしいのが、自身のエコシステムです。海外に目をやれば、“日本品質”の高さから、日本政府で使われているシステムを調達したいという声は少なくないです。にもかかわらず、国内に閉じこもってはないでしょうか? 視野を広く持ち、海外の要望に応え、彼らからの相談を喜んで受ける。そして海外での成功事例を国内に持ち込んで我々を刺激する。そんなマインドを持ち、Society5.0の実現をリードする存在へ脱却することを、私は強く望んでいます」(座間氏)

アマゾン ウェブ サービス :
https://aws.amazon.com/jp/government-education/

本件に関するお問合せ:
aws-jpps-qa@amazon.com

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