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ドイツ発「インダストリー4.0」が目指すスマートファクトリーとは
この巨大マーケットに対する取り組みが、ドイツの「インダストリー4.0」であり、アメリカ GE社の「インダストリアル・インターネット」である。まず、ドイツの「インダストリー4.0」について、鍋野氏は次のように説明した。
「ドイツのインダストリー4.0は、製造業におけるIoTの取り組みであり、産官学の国家プロジェクトです。ドイツ工学アカデミーという組織を中心に実証試験や検証を行い、その情報を産業界にフィードバックするやり方をとっています。2011年から始まり、2020年~2025年あたりをゴールにした、かなり腰を据えた取り組みです。4.0には『第4次産業革命』という意味が込められています」(鍋野氏)
インダストリー4.0においては、「スマートファクトリー(つながる工場)」が重要なコンセプトとなる。従来の工場は、製品設計、生産設計、生産管理、販売管理、保守・保全という水平方向のPLMと、ERP(基幹システム)、MES(製造実行システム)、SCADA(生産監視制御システム)などの垂直方向の製販管理が分断していた。これに対し、スマートファクトリーでは、MES以下の仕様・フォーマットの標準化をすすめ、水平・垂直方向を連携させることで、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを構築したりすることを目指している。
そして、インダストリー4.0の要になるのがソフトウェアであり、その世界標準の座をめぐって、SAP、シーメンスなどのドイツ大手企業が積極的に活動しているという。
「インダストリアル・インターネット」でGEは産業界のアップルを目指す
その中心がGEだ。GEは産業機器をインターネットでつなぎ、データ解析による高度な意思決定を可能とする「インダストリアル・インターネット」を提唱した。2014年3月には、「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」を設立し、現在、日本企業も含めた184社が加盟している。
「GEによれば、1つの機械に200~300個のセンサーを付けて情報をモニタリングすれば、故障を予知したり、稼働の無駄を洗い出して効率的に運用したりできるといいます。そのプラットフォームとして開発されているのが『Predix(プレディクス)』という基本ソフトウェアです。GEが考えているのはアップルと同じようなモデルです。iOS上にさまざまなアプリがあるように、Predixを提供し、その上でさまざまなソフトが動くようにしたいのです」(鍋野氏)
「Predix(プレディクス)」とは、機器・設備に設置したセンサーからデータを取得・解析し、機器・設備の制御を行うクラウドコンピュータのOSだ。鍋野氏によれば、産業用におけるアップルのiOS、マイクロソフトのWindowsのような存在だという。すでにGEは、石油、ガス、電力、水、輸送、航空、医療などの24分野向けのアプリケーションを提供し、「Predix」自体をオープン化して、広く活用できるようにする予定だ。日本およびアジアで「Predix」を取り扱うのが、ソフトバンクとなっている。
ドイツにはすでに5年遅れ、日本のものづくりが勝ち残るには?
では、日本のIoTへの取り組みはどうか。鍋野氏は、次のように危機感を露わにした。「ドイツに対して、日本はすでに5年遅れています。すでに、ソフトウェアはドイツ、アメリカが先行していますから、ソフトウェア・フォーマットなどの標準化については欧米のモノをそのまま採用し、それをうまく利用して、その先に行かなければならないでしょう」(鍋野氏)
「先行するドイツ、アメリカの仕組みを取り込んで、モノ+サービスの強みを作り、アナログとデジタルを融合(FUSION)した新しいビジネスモデルを実現することが求められています」(鍋野氏)
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