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2011年頃からIT業界で注目を集め始めている“ビッグデータ”というキーワード。現在の日本企業において、実際の利活用はどこまで進んでいるのだろうか。ソフトバンク ビジネス+IT編集部では、企業に勤めるビジネスパーソンを対象に、ビッグデータに関するアンケート調査を実施、470名からの回答を得た。ビッグデータの認知度や業務上での利用状況、データ活用における課題などについて聞いた。この結果を踏まえて、日本企業のビッグデータ活用の有効策を探る。
ビッグデータの利用意向に関する調査 調査概要
■調査方法:インターネットアンケート
■実施期間:2012年12月7日~12月18日
■対象者:従業員数20名以上の企業に勤めるビジネスパーソン
■有効回答数:470名
■ソフトバンク ビジネス+IT編集部調べ
定義まで理解している人は全体の2割という衝撃
はじめに調査結果の概要を紹介しておこう。まず「ビッグデータ」という言葉の認知度については、約半数が知っており、内容まで分かっていると答えた人が約2割いた一方で、半数近くが一切聞いたことがないと回答している(
Q1)。
続いてビッグデータを知っていると答えた人に対し、その定義を聞いた質問では、財務・管理会計のデータに加えて幅広い数値データをビッグデータとして捉えている現状が浮かび上がり、さらに動画やWord/Excelといったドキュメントデータなどのいわゆる非構造化データは、ビッグデータとしてあまり認知されていないことが分かった(
Q2)。
次にビッグデータへの取り組み状況について聞いた質問では、既に活用済み(多くの業務+一部の業務)と答えた人が全体の14%、1年以内の活用を検討しているとした人が33%にのぼった(
Q3)。
さらに活用済みと答えた人に対して、どんなデータを活用しているかを聞いたところ、売上/原価などERP関連のデータやドキュメントデータが高い割合を占め(
Q4)、検討中と答えた人は、ビッグデータの活用について、財務会計やマーケティング、あるいは業務効率化や情報共有の占める割合が高かった(
Q5)。
またデータ分析業務で利用しているツールとしては、ExcelやAccessが圧倒的に強く、一部の人には専門ツールも活用されているという結果が得られた(
Q6)。
そしてビッグデータを含め、データ活用における課題を聞いた質問では、ビッグデータを活用中/活用検討中と答えた人の両方で、“分析方法が不明、データ分析を行える人材がいない”“解決すべき課題が不明確”という2つの項目が上記にランキングされた(
Q7、Q8)。ノウハウと人材の不足、自社の課題そのものが分からないというユーザー企業の直近の悩みが浮き彫りになった形だ。
従来ツールでは分析できないからこそ登場した“ビッグデータ”
こうした結果から、ユーザー企業のどのような実情を読み取ることができるのか。ビッグデータソリューションを手がける専門家に話を聞いた。
まずIT業界では認知が進んでいると思われる“ビッグデータ”だが、今回の調査では半数近くが知らないと答えた。この点について、日本テラデータ マーケティング統括部 統括部長の中村博氏は、次のように指摘する。
「ITの世界では既に当たり前の感があるビッグデータという言葉ですが、データを利用するユーザー側にとっては、これまでIT部門が主に扱ってきた構造化データと、ビッグデータの違いを理解する必然性がないため、正しい認知は十分に進んでいないとみるべきでしょう。」(中村氏)
ビッグデータの定義についても、単なる財務管理系のデータをビッグデータと捉えている人が多いが、通常こうしたものだけを採り上げてビッグデータとは呼ばない。営業本部 ASTERビジネス推進室 室長の一柳健太氏は次のように考えを示した。
「ビッグデータの分析はExcelやAccessなどではできません。従来の方法でできなかったからこそ、今ビッグデータというキーワードが出てきています。今までの技術では扱うことができないデータをどう分析するのか。それこそが、ビッグデータ活用の議論なのです。」(一柳氏)
さらに一柳氏は今回の調査結果全体を俯瞰して、回答者に1つの誤解があると指摘する。それは、回答者が従来データを分析して意思決定に繋げていくというビジネスインテリジェンス(BI)を志向しており、それは真のビッグデータ活用ではないのではないかという見解だ。
「BIでは各種データを統合し、ユーザー部門が見たい切り口でタイムリーにデータを提供することで現場のビジネスに活用する、という流れができています。しかしビッグデータの分析とは、そもそも目の前にあるWebログやソーシャルデータ、センサーデータなど大量にあるデータを使って新しい発見を導き出すというもの。これにより、まったく未知の世界のイノベーションにつながる手がかりをえるのです。何かしらの“パターン”が見つかればBIに進むことができますが、ビッグデータの活用で本当に難しいのはこのパターンを見つけるところなのです。これはビッグデータ分析でしか行えません。」(一柳氏)
BIとビッグデータの分析は、明確に切り分けて考える必要があるということだ。
また今回の調査では、ユーザー企業におけるデータ活用上の課題として、ノウハウと人材の不足がトップに挙げられた。この結果について、コーポレート・エバンジェリスト/エグゼクティブ・コンサルタントの金井啓一氏は、日本企業における人事制度上の課題もあると指摘する。
「国を問わず、人材の問題はあります。ただ、日本企業は総合職採用を行い、3年もすれば所属部署が替わっていきます。しかしデータ分析を担うデータサイエンティストは専門職であり、2~3年従事してようやく一人前になります。これでは人材の育ちようがありません。データサイエンティストは総合職の一環として見なすのではなく、時間をかけて育成するのか、社外から調達するのかを真剣に考えるべき時期に来ているのではないかと思います。」(金井氏)
“課題が不明”ではなく、自社で考える力を養うには
また調査結果では課題自体が不明確という悩みも多かったが、この点について中村氏は、やはり自社で考える力を養わなければならないと強調する。
「勘定系データの分析とは異なり、情報系のデータ分析では“タテとヨコの集計が合えばいい”というものではありません。データからヒントを読み取って、自社の活動に繋げていくことが肝心です。人がいなければ投下する。我々もそのお手伝いをしていますが、自分たちにしかわからない課題もたくさんあります。考える力を養うことが今後企業が生き残っていくための道だと思います。」(中村氏)
もちろん、構造化データの分析と活用、それを踏まえた上でのビッグデータの分析と活用に対して、テラデータは豊富なソリューションを提供することでユーザー企業を支援している。
たとえば、データ活用のもっとも重要な基盤とも言うべき、論理データモデル(LDM)をテンプレートとして用意。これは、全世界の顧客企業のベストプラクティスを集めてモデル化したものだ。1年から2年に1度の割合で継続的にバージョンアップされ、製造業や小売業、あるいは金融業や通信業など多種多様な業種別にラインナップされている。
「格納するデータの構造を定めた論理データモデルは通常ゼロから作る必要があり、すべてのビジネスエリアを網羅するようなものの場合、完成までに膨大な手間と時間がかかります。そこに業種別LDMを適用していただくことで大幅な時間短縮と労力、コストの低減を図ることが可能となります。」(金井氏)
またビッグデータの分析と活用フェーズでは、ビッグデータ分析のプラットフォームとなる「Teradata Aster」が有効だ。Teradata Asterは、リレーショナル・データベースと大容量データの分散処理を可能にするMapReduce技術とを統合した並列処理型のソフトウェアで、独自のSQL-MapReduce技術を提供することで、多構造化データの分析を行う際にSQLを介してMapReduceの処理を実行することができるようになっている。
「先にも述べたように、ビッグデータ分析に至る大きな障壁となっているのは、Webログなど大量の多構造化データを分析して何らかのパターンを見つけるところです。ここがクリアになれば、ビッグデータも複数あるデータソースの1つに過ぎません。以後はLDMなどを活用してデータウェアハウスを構築し、BIの世界に繋げていくことも容易です。そこにTeradata Asterを適用することで、大量の多構造化データもより速く解析することができるようになります。」(一柳氏)
ここで採り上げたテラデータのソリューションは、来る3月7日(木)、東京渋谷にて開催される国内最大級のデータウェアハウスとデータ活用に関するコンファレンス「Teradata Universe Tokyo 2013」で詳しく紹介される予定だ。
今回のTeradata Universeでは、インターネット広告事業を展開するヤフーや大丸松坂屋百貨店などに加え、英国保険大手のアビバや米国のHDDドライブメーカーであるウエスタンデジタルなど、国内外の先進企業におけるデータ活用事例も多数ラインナップされている。データ活用に悩みを持つユーザー企業の担当者は、この機会に是非、足を運ばれてみてはいかがだろうか。
「基幹系のシステムではもはや競争力の差別化を図ることはできません。企業が生き残れるかどうかは、やはり多種多様な情報系のデータをどう活用するかにかかってくる。Teradata Universeがそのヒントをご提供できる場になれば幸いです。」(中村氏)
(聞き手:編集部 松尾 執筆:西山毅)
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