生成AI時代の今こそ重要になるメインフレームのモダナイゼーションと3つのアプローチ
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メインフレームの重要性は今後も変わらない
「メインフレームは現在でも重要であり、今後も存続します。特に日本市場では金融や保険などの重要なシステムの多くが現在もメインフレーム上で動いています」とキンドリルホールディングス コア エンタープライズ&zクラウド グローバル・プラクティス・リーダーのペトラ・グーダ氏は強調する。
同調査によると、96%が「一部のワークロードをメインフレームから移行する」と回答し、メインフレームで動いているワークロードの36%を移行しようとしていることもわかった。「企業の中でハイブリッドITが重要な課題になっている」とグーダ氏が指摘するように、メインフレームを中心に据えながらも、クラウドを取り入れた環境を構築する動きが増えているというのだ。
トレンドとなる生成AI活用とオブザーバビリティ
生成AIを含め、ここ数年AIは市場で大きなトレンドであり続けているが、それは決してメインフレームと無関係ではない。なぜならAIにはデータが必要であり、メインフレームは企業における重要なデータを大量に蓄積しているからだ。
実際に、こうしたデータを活用したいというニーズはメインフレームのモダナイゼーションを加速させる要因になっている。同調査では86%が「メインフレーム上で、またはメインフレームとともに生成AIツールやアプリケーションを導入、または計画中」と回答した。
生成AIとともにもう1つトレンドとして上がったのが可観測性(オブザーバビリティ)だ。IT環境のハイブリッド化・複雑化が進むにつれてシステム監視の難易度は上がる。調査では、92%が「ハイブリッド環境の運用監視のために単一のダッシュボードが必要」と回答した。だが、85%はその実現を難しいと感じていることも明らかになっている。
なお、上述した動向や企業のニーズは日本のメインフレームユーザー企業でも大きな相違はない。だが、グローバルとは異なるトレンドとして、「日本では国産メインフレームベンダーの撤回発表もあったことから『メインフレームをなんとかしなくては』という大きな波が起きています」とキンドリルジャパン プラクティス事業本部 コアエンタープライズ& zCloud事業部長 理事の中尾 友謙氏は説明する。
メインフレームモダナイゼーションの3つのアプローチ
キンドリルは、ワークロードをメインフレーム上でモダナイゼーションする「Modernize on」、他のプラットフォームとメインフレームを統合可能にする「Integrate with」、メインフレームから一部あるいは完全に移行する「Move off」と3つのアプローチを提唱している。
「日本市場の特徴としては、これまではメインフレーム上にすべてを残すか、完全にメインフレームから移行するかと考えられることが多かった。現在では残すべきものを残すという考えで進める企業も増えています」と中尾氏は話す。メインフレームからの移行に関して業界では製造業が先行し、現在は金融でもモダナイズの動きが活発になっているとのことだ。
これらのアプローチを考えるにあたり、企業が着目するべき観点がセキュリティ、コスト、データ活用の3つである。
1つ目のセキュリティについては、調査対象のうち2/3(66%)が、メインフレームの提供する最も重要な機能としてセキュリティを挙げており、92%が規制要件への懸念に対する対応をメインフレームモダナイゼーション戦略に入れていることが調査でわかった。
「メインフレームはもともとセキュリティが高いプラットフォームですが、Modernize onでさらにセキュリティ強化対応を進めようというお客さまが多いことを示唆しています」と中尾氏は説明する。
2つ目のコストについては、メインフレーム上のアプリケーションの使用量が増加してもソフトウェアコスト面でより最適化される環境へと変更していく動きがある。
3つ目のデータ活用のニーズは、中尾氏も「最近特に増えている」と強調する。単純にメインフレーム上のデータをコピーして分析基盤に載せることもできるが、データの「量」と「鮮度」を考えると、メインフレームとクラウド環境をシームレスに統合して使うことが求められているという。
スキルギャップ問題を生成AIで解決
中尾氏は、日本語特有の2バイト文字問題、バッチ処理対象の整理などを挙げる。「たとえばバッチ処理の中に、ミッションクリティカルなものとそうでないものが混在している状況があります。それらを仕分けした上で、重要ではないものを『Move off』するアプローチを取ることが重要になります」(中尾氏)
グーダ氏はグローバル共通の課題として、メインフレームのサイロ化が生む技術的な問題とスキルギャップを付け加えた。
特にスキルについては、調査によると1/4以上(28%)が「モダナイゼーションを進めるにあたって適切なスキルがない」と回答した。スキル不足が原因で、77%の組織が外部からの支援を受けているという。グーダ氏は「メインフレームのスキルだけでなく、AI、セキュリティなどのスキルを併せ持つ人材が必要とされています。また、他のシステムとの統合、DevOpsツールなど他のプラットフォームで使っているツールなどについても知識が求められます」と説明する。
実は、このような課題を解決する動きとして強力な支援となるのが生成AIだ。グーダ氏は「生成AIを使って、メインフレームモダナイゼーションを加速させるという動きが顕著になっています」と話す。たとえば、メインフレームの言語であるCOBOLやPL/Iで書かれた古いコードの内容を生成AI自然言語で説明してもらったり、コードをJavaやC#に変換したりして開発を効率化するユースケースが増えているという。
豊富な人材による支援体制を持つキンドリル
「キンドリルには約7500人のメインフレームの専門家がおり、メインフレームサービスは我々の事業の1/3を占めています。継続して投資を続けています」とグーダ氏。技術者として入社する社員はすべて入社後にメインフレームの研修を受けており、その後AIなどのスキルを身につけるという。
「メインフレームは止まってはならないシステムで、キンドリルはその重要性を深く理解しています。目指すのはワークロードに最適なアプローチを取り、リスクの低いモダナイゼーションを支援することです」(グーダ氏)
近年キンドリルは、既存のメインフレームユーザーの顧客向けには、AIや自動化によりIT運用を最適化する「Kyndryl Bridge」を通じて洞察を得ながら、その企業にとって最適なアプローチを探っていく。「同ソリューションはグローバルですでに1300社のお客さまに利用していただいています」とグーダ氏。新規顧客に対しては、コンサルテーションで既存の環境などの現状を整理してから進めていく。「いずれの方法でも、経験豊富なスタッフが伴走し、構築からその後の保守まで一気通貫でサービスを提供します」(グーダ氏)。
もはや“現状維持”の選択肢はない
まず、「Modernize on」でメインフレームを使い続ける顧客に対しては、キンドリルのメインフレームクラウド環境として「zCloud」を用意している。「従量課金のマネージドサービスを利用し自社でメインフレームを維持するだけでなく、お客さまのアプリケーション資産を我々の環境上に移していただくこともできます」と中尾氏は説明する。
「Integrate with」のアプローチでは、Microsoft Azure環境を接続しクラウドにある分析基盤を使って、メインフレーム上のデータを分析するといったプロジェクトも現在進めているという。
「Move off」のアプローチでは、Amazon Web Services(AWS)への移行を行うことが多いという。キンドリルにはAWSが提供するメインフレームアプリケーションの自動リファクタリング「Blu Age」の資格者を多数擁しており、日本でも最高位のレベル3の認定保持者が複数存在している。
「日本は重要なインフラの多くがメインフレームで動いており、キンドリルにとって重要な市場です。メインフレームを稼働させているすべての企業は、何らかの形でモダナイゼーションをする必要があり、もはや“現状維持”という選択肢はないと言えます」とグーダ氏は強調する。
日本市場に向けて、最後に中尾氏はこう語る。
「メインフレームのモダナイゼーションはもはや先進的な企業の取り組みではありません。キンドリルとしてはIBM以外のメインフレームも扱うことができますし、クラウドのスキルと経験も蓄積しているため、ぜひ相談していただきたいと思います。社会を支える重要なインフラであるメインフレームのモダナイゼーションを通じて、日本企業の競争力アップに貢献したいと願っています」