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現在、効率化のためにあらゆる場面でDXが推進されているが、リアルの価値、生活や精神のゆたかさについても再認識する段階にきているだろう。近未来は、リアルとサイバー、オーグメンテーション(拡張)とオートメーション(自動化)が密接に融合したハイブリッドな社会へと発展することが予想されているが、具体的にどのようなことが実現するのだろうか。なんと、SF映画「マトリックス」のあるシーンも、すでに現実の世界で似たことを行っているという。近未来に実現しうる世界について、東京大学 大学院情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・CSOを務める暦本 純一氏に話を聞いた。

テクノロジーが人間の能力を最大化する

 暦本氏は、人間と機械・テクノロジーの関わり合いを研究する、ユーザーインターフェース研究の第一人者だ。スマートフォンなど複数の指で操作するマルチタッチシステムを2001年に開発した。

 コンピュータのマウスが発明されてから30年程、1個の点を操作することが当然と思われてきた。しかし、そもそも人間はマルチタッチだ。複数の指で物を操作する。スマートフォンの操作も複数の指を使えば、さまざまなことが簡単に行える。

 近年AIが進化し、プロンプトエンジニアリングやチャットGPTなども登場したが、まだ人間の能力をコンピュータに伝えきれていない。

「人間の持っている能力を活用することが、大きな研究課題です。テクノロジーが能力を引き出したり拡張したりすれば、人間はもっと色々なことができるでしょう。子供でも大人でも、障害のある方も、自分の能力を発揮できるようになります」(暦本氏)

 以降では、暦本氏が進める、テクノロジーでリアルとバーチャルをつなげるさまざまな研究や、それによって近未来に実現しうる世界について紹介する。

この記事の続き >>

  • ・人間が人やAIとネットワークでつながる近未来の世界観「IoA」
    ・実現が近い人間の認知能力の拡張、○○が最有力
    ・裏千家の研究所と共同研究、リアルな茶室をバーチャルで再現

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