- 2021/02/24 掲載
アングル:FRB議長、経済対策積極支持からの「態度変化」
ところがパウエル氏が23日の上院における半期議会証言で見せた態度は昨年と異なり、自らの意見を発するのを差し控えた。
昨年は、さらなる財政支援がなければ米経済は厳しい状況に陥ると警告し、再三にわたって追加対策を要請したパウエル氏だったが、今回ケネディ上院議員(共和党)に対して「私は(1.9兆ドルの)経済対策法案についてずっと何らかの見解を示してこなかった。FRBが特定の条文や法律に関する財政的な議論に加わるのは不適切だ。それはわれわれの役目ではない」と語った。
ケネディ氏が「われわれが法案を可決しなくても、あなたは冷静でいるのか」とさらに問い詰めると、パウエル氏は「それもまた意見の表明になってしまう。つまりわれわれが自重しているのは意見の表明なのだ」と答え、グリーンスパン元FRB議長のかつての議会証言をほうふつさせるように「冷静な姿勢、あるいはその逆であっても、私は意見を示さなければならなくなる」と付け加えた。
この慎重の上に慎重を重ねた客観的なパウエル氏の態度が、経済対策を巡る心境の変化を意味するかどうかは分からない。一方で同氏は繰り返し、米経済は健全な状態には「程遠く」、一段の支援が必要だと強調している。
マクロポリシー・パースペクティブスのジュリア・コロナド社長は「大規模対策が実現に向かっているという事実に単純に反応した、と私は解釈したい」と述べた。実際コロナド氏によると、パウエル氏がこの日、米経済の今年の成長率が6%のレンジに達するかもしれないと予想したのは、既に追加の財政支援を織り込んだことを「100%」意味しているという。
バイデン氏の経済対策法案は22日に下院予算委員会で承認され、数日中に下院本会議で採決が行われる予定で、その後与党・民主党がかろうじて多数派になっている上院の審議に付される。
ここでトランプ前政権と議会が追加財政措置について何度も合意を試みて結局成功しなかった昨年、パウエル氏が行った発言をもう一度振り返ってみよう。
例えば10月、パウエル氏は企業エコノミスト団体向けの講演で「金融政策と財政政策が一体となって経済がはっきりと暗闇を抜け出すまで支援を提供するなら、景気回復はより強固かつ急速になる」と明言した。
そして12月には、議会が最終的に8億9200万ドル規模の支援策で合意間近の様相を呈した中でさらに踏み込み、記者会見で「目下、財政出動をすべき根拠は非常に強い」と主張。具体的な内容は議会に委ねるとしつつ、家計と企業に財政支援が不可欠だという点は「幅広く理解されている」と訴え、「私は議会が今行っている作業を間違いなく歓迎するだろう」と付け加えた。
一転して今回は経済対策法案に対するコメントを拒否したが、政府が財政支援を加速させる道を選んでも、望ましくない物価高騰は想定されないと請け合った。
パウエル氏の見立てでは、年後半の米経済は「非常に好調」となりそうで、個人消費の強まりが物価を押し上げる公算が大きい。それでもこの押し上げ効果は大規模なものではなく、長続きもしないという。
(Ann Saphir記者)
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