• 2020/10/13 掲載

アングル:「バイデントレード」の死角、株高・金利上昇シナリオは万全か

ロイター

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伊賀大記

[東京 12日 ロイター] - 金融市場は米大統領選でのバイデン氏と議会選挙での民主党優位を織り込み、財政拡大観測による株高・金利上昇となっているが、いわゆる「バイデントレード」を疑問視する声も少なくない。富裕層や企業に対する増税は本質的に株安要因であるだけでなく、選挙の行方も最高裁裁判事の増員問題などで依然予断を許さないためだ。

<トレード内容が変質>

シナリオの中身が変わった。以前はトランプ氏勝利であれば株高・債券安、バイデン氏勝利なら株安・債券高という予想が主流であったが、ここにきてバイデン氏勝利でも株高・債券安(金利上昇)というシナリオがマーケットで広がっている。

シナリオを変化させたのは「トリプルブルー」による財政拡大観測だ。トリプルブルーとは、米大統領選で民主党のバイデン氏が勝利し、議会選挙でも上院・下院ともに民主党が制することを示す。ブルーは民主党のイメージカラーだ。

民主党の追加経済対策の規模は2.2兆ドル。一方、トランプ政権が提案する追加対策案は1.8兆ドル規模。バイデン氏は、2兆ドルのインフラ投資策なども掲げており「トランプ氏よりも景気刺激的になるのではないか」(外資系運用会社)との見方が強まっている。

しかし、そのシナリオはやや前のめり過ぎるとの指摘も少なくない。「トリプルブルーで本当に財政拡大となるかは不透明。そもそもバイデン氏や民主党が勝利するかもまだわからない。カネ余り相場の都合のいいシナリオだ」と、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は指摘する。

<脱トランプトレード>

そもそも金利上昇は株価にとってマイナスであり、「バイデントレード」は矛盾をはらむ。景気拡大による「良い金利上昇」であればマイナス影響は限定的だが、財政拡大による国債増発を懸念した「悪い金利上昇」であれば、株価にネガティブに働く。

今回、パウエルFRB(連邦準備理事会)議長は積極的な財政政策による景気下支えを期待している[nL3N2GK3SX]。FRBが財政拡大に呼応し、国債買い入れを増やせば金利上昇は抑制される可能性が大きい。低金利は株高要因だが、米金利上昇や、それをもとにしたドル高/円安シナリオは崩れることになる。

一方でバイデン氏は、富裕層や企業に対する増税を打ち出している。株式価値の源泉は企業の利益であり、株の買い手としての富裕層への増税も、株価にとってはネガティブ要因。増税が先延ばしされても、将来の価値を織り込む株価にとってはマイナスだ。国債に頼らない財源として増税策を実施すれば、株高シナリオは揺らぐことになる。

7日の副大統領討論会で、ペンス氏は「バイデン氏は就任初日に増税することになる」と発言。ハリス氏は、バイデン氏は年間所得が40万ドルを下回る人々には増税しないと反論したが、増税自体は否定しなかった。

「バイデントレード」が広がってきたにもかかわらず、金融市場が敏感に反応するのは依然としてトランプ氏の発言や動向だ。中国人民元やメキシコペソなど、トランプ氏が攻撃対象としてきた国の通貨が上昇の気配をみせている。「バイデントレードというよりは脱トランプトレード」(国内証券)との指摘も多い。

<最高裁判事の増員問題>

「トリプルブルー」観測自体も強固ではない。上院選挙が依然微妙であるほか、最高裁判事の増員問題がバイデン陣営の弱点として浮上してきている。

9月にリベラル派のルース・ギンズバーグ最高裁判事が死去したのを受け、トランプ大統領は保守派バレット連邦高裁判事を指名した。保守派6人・リベラル派3人と保守派優勢の構成になるため、バイデン氏が選挙勝利後にリベラル派の判事を増員すべきだとの声が一部にある。

しかし、この強引な手法には反対論も多い。強硬に進めてしまえば、急進左派を嫌う穏健派層がバイデン氏支援から離脱する可能性がある。バイデン氏自身も昨年時点で消極的な考えを示していた。しかし、保守派優勢の状況ではオバマケアの存続などが危うくなる。

最高裁判事の数は1869年以来、9人から変わっていない。ただ、議会は判事の数を変更する権限がある。バイデン氏は8日、大統領選で勝利すれば自らの立場を明らかにすると述べるにとどめた。

「決まらないことが最大のリスクだった。バイデン氏のリードが広がったことが一番のリスクオン要因。接戦観測が広がれば、リスクオフ圧力は再び強まる」と、アライアンス・バーンスタインの債券運用調査部長、駱正彦氏は指摘する。

ニュージーランドに拠点を置くオンライン予測市場、プレディクトイットによると、9日時点で、バイデン氏勝利の確率は67%。しかし、2016年の米大統領選において、ヒラリー・クリントン候補は同じ時点で約80%ともっと高かった。

(編集:青山敦子)

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