• 2020/07/09 掲載

アングル:コロナ禍で「デッドクロス」出現、ドル高変調の兆し

ロイター

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Saqib Iqbal Ahmed

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国で新型コロナウイルスの感染者が再び急増していることに加え、欧州経済に明るさが増しているため、一部投資家のドルに対する見方が悪化してきた。その結果、何年も続いてきたドル高基調が維持できるかどうか雲行きが怪しくなりつつある。

実際主要6通貨に対するドル指数<.DXY>は直近高値から6%下がっており、通貨先物市場におけるドル売り持ちの規模は2018年以来の水準に膨らんでいる。

さらにバンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのアナリストチームによると、今週に入ってからのドル軟化を受け、チャート上ではドルの50日移動平均が200日移動平均を下に突き抜ける「デッドクロス」が発生した。現在のように200日移動平均が切り下がっている中でデッドクロスが起きたのは1980年以降9回あったが、うち8回はその後ドル安局面が到来したという。

足元のドル売りの背景には、新型コロナ問題や人種差別抗議デモへの対応に批判が集まっているトランプ政権への支持率低下という事態がある。同時に投資家は今後欧州の経済成長が高まるとの期待を強めており、ずっとドル高に寄与していた米欧の成長格差は縮小する可能性が出てきている。

ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「米国は特別だという考え方は、コロナ危機を通じて劇的に後退した。成長格差は米国に不利な形で縮まってきていて、ドルを守勢に立たせている」と述べた。

今年のドルの値動きを見てみよう。年初に売りで始まった後、新型コロナの感染拡大で市場が大混乱した3月にいったん持ち直した。投資家がドルなどの安全資産に資金を逃避させたからだ。

ただそれからリスク志向が戻って逃避ポジションが巻き戻されるとともに、ドルは再び下落している。

ごく最近では、パンデミックの抑え込みでより成功している様相の欧州と、コロナ対応にまずさが目立つ米国の対比を、ドルの先行きを占う際に考慮に入れる動きも見え始めた。

足元の米指標は急激な落ち込みからある程度改善してきたとはいえ、新規感染者の急増に伴って各州が経済活動再開の計画を巻き戻すようなら、せっかくの状況好転は台無しになりかねない、というのが一部の投資家の懸念だ。

スコシアバンクのチーフFXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏はノートで「明らかに現時点では、欧州連合(EU)諸国が米国よりも先を進んでいる。米国の経済トレンドは出遅れ感が目立つ」と指摘した。

同行は、ユーロ圏経済シグナルが上向いていることと、米国のコロナ対応の不手際を理由に、年末のユーロ/ドル予想を今の1.12ドルから上方修正するかもしれないと説明する。足元のユーロ/ドルは1.1342ドルで、年初来安値から6%上昇している。

これまで多くの投資家は、株価が上昇してもなお、ドルをはじめとする安全資産の持ち高を減らすのをためらってきた。確かに8日には金価格が2011年以来の高値を付け、キャッシュ保有は依然として歴史的な高水準だ。再びリスク回避ムードが広がれば、投資家は株を売ってドルに回帰してもおかしくない。

しかし当面は、ドルに厳しい視線が向けられている面がある。TDセキュリティーズのアナリストチームは最近、主要通貨に対するドルの見通しを下方修正した。さまざまな尺度に照らすとドルは10-23%過大評価されており、ユーロ/ドルは来年終盤までに1.20ドルまでユーロ高が進むと予想する。

TDセキュリティーズによると、米国で間もなく期限を迎える企業や家計への支援措置を議会が延長できない場合も、ドルが打撃を受ける恐れがある。ドルにとって「今月の最悪事態は、新規感染者急増の中で財政の崖に差し掛かることだ」という。

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