- 2025/03/07 掲載
焦点:ドイツ財政政策大転換、ECBの利下げ見通し不透明に
[ロンドン 6日 ロイター] - ドイツが財政政策を大転換させたことで、金融市場では欧州中央銀行(ECB)の利下げペースが見通しにくくなっている。ECBが6日の理事会で金融政策のガイダンス(指針)を変更したことも、こうした不透明感を強めた。
ECBは同日、主要政策金利の預金金利を0.25%ポイント引き下げ2.5%とした。昨年6月以降で6回目の利下げ。ただECBは、金融政策による「引き締め度合いが有意に下がっている」とし、前回の「引き締め的である」という表現を変更した。
ドイツで連立政権を樹立する見通しの主要政党が4日、5000億ユーロ(5414億ドル)規模のインフラ基金創設と「債務ブレーキ」改革で合意したことで、トレーダーらは既にECBの利下げ回数が減ると予想しており、理事会の表現変更はその見方を裏付けるものとなった。
アビバ・インベスターズのシニアエコノミスト、バジレイオス・キオナキス氏は「利下げはあと1回か、最多でも2回だろう」と述べ、ECBの表現変更は政策タカ派の勝利と利下げ打ち止めの到来を意味するとの見方を示した。
実際、複数の関係筋がロイターに語ったところでは、ECBの政策担当者らも4月にいったん利下げを休止し、貿易・財政政策が見通せるようになってから再び利下げする可能性が高まったと考えている。
金融市場は現在、6日の利下げに続いて年内に2回利下げが実施される確率を60%前後とみなしている。先週時点では3回の追加利下げを織り込んでいた。
<財政政策VS金融政策>
市場は、ドイツの大胆な財政政策の変更により、欧州経済が大きく変化する可能性を期待している。ユーロは6日に急伸して1ユーロ=1.0854ドルと、米大統領選でトランプ氏が勝利した11月6日以来の最高値を付けた。関税の懸念からユーロが弱くなった2月の1.01ドル近辺に比べると大幅に上昇している。
国債発行が急増するとの見方から、ドイツの10年物国債利回りは今週、1990年代初頭以降で最も大幅に上昇する週となりそうな勢いだ。
注目すべきは、ECBが来年利上げを再開する可能性まで市場が織り込み始めたことだ。これは財政拡大がインフレを押し上げると想定した動きで、市場は来年9月までに利上げが1回行われる確率を40%前後と見なしている。
ドイツの財政政策は詳細がほとんど分かっておらず、まだ承認もされていないため、6日のECBの決定では勘案されなかった。しかし金融政策の見通しがますます不透明になったのは確かだ。
RBC・ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者は「経済にこれだけの資金を投入すれば、状況は相当変わってくる。インフレ率も上昇するだろう」と述べた。
予想物価上昇率の主要指標は、ドイツの財政政策案の発表を受けて2.22%前後に急上昇し、ECBの物価目標2%をわずかに超えた。2013年にさかのぼるLSEGのデータによると、5日の上昇率は記録上最大だ。
ダウディング氏は、ECBの利下げがあと1回で打ち止めになると予想。6日のECB理事会の結果発表前、「われわれは市場が織り込む利下げ回数が多すぎると考え、短期のドイツ国債を売っている」と語った。
ゴールドマン・サックスやノムラも、予想する利下げ回数を下方修正した。昨年10月以来、毎回の理事会で利下げが実施されることをほぼ確実視してきた市場にとって、次の一手が見通せない状況はこれまでと様変わりだ。
<関税の影響>
ユーロ圏の成長見通しが一変するとの楽観論が広がる中でも、米国の関税は依然、大きな懸念材料として残る。
米国が欧州に対して広範な関税を課すかどうかはまだ分からない。アルミニウムと鉄鋼の関税は12日に実施されるが、大幅な相互関税や、自動車その他の産業に対する関税が導入されれば欧州は打撃を被る。
フィデリティー・インターナショナルのマクロ・ストラテジック資産配分グローバル責任者、サルマン・アハメド氏は「市場は関税を過小評価している」と指摘。ECBは、以前予想されていた1.5%ではなく1.75%までの利下げにとどめると予想しつつも、関税が課されれば追加利下げで対応するとの見方を示した。
ダンスケ銀行のチーフアナリスト、ピート・クリスチャンセン氏は、ドイツの財政提案にはまだ不確実性が大きいとし、ECBが年内に1.50%まで利下げを進めるとの予想を変えていない。同氏は「数字は出たが、それだけだ。いつ、どの程度の規模で実行に移されるかは分かっていない」と話した。
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