• 2025/02/28 掲載

アングル:米FRBの量的引き締めは停止か継続か、混乱する先行き見通し

ロイター

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Michael S. Derby

[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小プロセスを巡り、先行き見通しが混乱している。19日公表の1月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨がきっかけだ。保有債券残高を削減するFRBの取り組みについて「さまざまなメンバー」が政府の債務上限問題の動向と絡み合い、影響を受けかねないと懸念を示したからだ。

議事要旨公表の数日前まで、FRBによる米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の残高を削減する「量的引き締め(QT)」について、多くの銀行が終了予想時期を後ろ倒しにしていた。しかし、今では削減プロセス見通しにコンセンサスが存在しなくなっている。

議事要旨で懸念を表明した複数のメンバーは、連邦議会が政府財政の在り方や1月に効力が復活した法定債務上限について対処する中、FRBとしては先行き不透明感のある短期金融市場の状況を乗り切るため、QTの一時停止か減速をする準備があると述べた。

こうした背景には、法定債務上限に達する時期がはっきりしないことがある。財務省は既に「特別措置」を導入し、制限範囲でほとんど通常通りに国債発行を継続しているものの、市場では債務上限到達時期の予想にかなり幅があり、中には初夏までに到達するとの見方もある。

このため上限到達の前後の短期金融市場の様子を想定すると、しばらくの間不安定化する恐れがあり、FRBが流動性を過剰吸収するリスクが高まる。FRBはこうした事態を望んでおらず、QTプロセスの変更につながる可能性がある。

市場の流動性レベルを読み取ることは難しい。アナリストらによると、債務上限が適用されている間も資金調達を続ける措置を財務省が取ることで、金融システムに資金が流れ込み、それまで安定推移だった準備預金の水準が押し上げられる。一方で、債務上限問題が解決されると、今度は急速に市場から流動性が吸収されてしまうことになる。

<停止、減速、それとも継続か>

ライトソンICAPのアナリストは「FOMCはバランスシート縮小ペースを完全に停止するのではなく、『減速』する方向に傾くと考えられる」と話す。完全停止してしまうと、FRBは保有残高を安定させるため、国債買い入れが一定程度必要になる。「QTペース変更だけでも市場との対話に非常に苦労するのに、一時的な新たな資産購入プログラムの導入まで説明するとなれば一層大変なことになる」と指摘する。

バークレイズのアナリストは依然、QTが9月か10月に終了するとの見解を維持している。「例えば3月や5月のFOMCで一時停止を決定し、その後は短期間再開し9月や10月に資産圧縮を終えるのは、合理的ではないかもしれない」と指摘する。

その上で「1月のFOMC議事要旨で示された懸念について、われわれの見方では、準備預金の水準に関しての意味は大きくなく、むしろ8―10月にかけ、水準がどれほど急ピッチに減るかに関するものかもしれない」と話す。

一方で、QTを停止すればFRBが望むよりも早期にQT終了に追い込まれるリスクがあると考えるアナリストもいる。

調査会社LHマイヤーのアナリストは「一時停止後に再開されない場合、完全停止に転じかねない。特に債務上限問題が市場機能への信頼を傷つけたとの見方が強まれば、QT再開は慎重を要するだろう」と推測する。

こうしたことから、債務上限問題が続く間はQTを減速させるべきとの見解につながっている。

<流動性の見極め>

FRBは以前から、政府が財政をやりくりする取り組みによって、流動性が十分かどうかを市場からに明確に読み取ることが難しくなるのではないかと懸念していた。このためFRBは昨年、QTのペースを減速させることで最終段階に向けたアプローチを慎重に進めることにした。

さらに、短期金融市場で過度な変動を引き起こしたり、政策金利のフェデラルファンド金利のコントロールを損なったりすることなく、QTをどこまで進められるかを見極めるのに腐心していた。

ただ、最近までFRB当局者はQT継続の余地があるとの認識を示しており、市場流動性に関する最新のデータでもQT停止が必要となる問題は見られなかった。ただ、1月の議事要旨公表後にQTプロセスを巡るFRBの次の一手が予想しづらくなっている。

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