- 2025/02/03 掲載
トランプ関税に市場動揺、輸出関連株・通貨が下落 元は過去最安値
Tom Westbrook Rishav Chatterjee
[シンガポール 3日 ロイター] - トランプ米大統領が主要貿易相手国に関税を課すと表明したことを受けて、投資家らが貿易戦争のリスクを見極めようとする中、3日の金融市場ではドル買いと株式売りが進んだ。
トランプ氏は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課す大統領令に署名した。
アジア市場は低迷し、日本の自動車メーカー、台湾や韓国の半導体メーカー、中国の電子商取引企業など、 輸出に依存する銘柄が最も大きな打撃を受けた。
RBCキャピタル・マーケッツ(シンガポール)のアジア通貨戦略担当責任者アルビン・タン氏は「トランプ氏の貿易戦争が始まった」と指摘。近いうちにドルが後退することはなさそうだと述べた。
投資家は関税の影響を受ける国々がそれを相殺するために自国通貨安を誘導すると考えている。
3日のユーロは1.3%安。欧州が次の関税対象になるかもしれないと懸念された。
メキシコペソは約3年ぶりの安値、カナダドルは22年ぶりの安値を付け、中国人民元はオフショア取引で過去最安値となった。アジア新興国通貨は軒並み下落し、タイバーツとインドネシアルピアの下げが目立った。
原油は大幅高、金属は下落、米株先物は約2%値を下げた。
バークレイズなどのアナリストが米国企業の収益が押し下げられると予想し、世界各国の対応が不透明だと指摘したことから株価は下落。メキシコとカナダは報復関税を課すと表明し、中国は世界貿易機関(WTO)を通じて異議を申し立てるとともに、他の「対抗措置」を取る方針を示した。
みずほのアナリストは、株式強気派が「トランプ取引」を再評価していると指摘。「『トランプは株式市場にとって良い』という話に誘惑された株式強気派は、報復関税のスパイラルの中で成長/利益に厄介な影響を与えかねない警鐘にさらされている」と述べた。
台湾株は3.5%安、韓国株は2.5%安。サムスン電子は2.7%、台湾積体電路製造(TSMC)は5.7%それぞれ下落した。鴻海精密工業は8%急落した。
豪州株は1.8%安、日本株は2.7%安。欧州株は1.5%安となっている。一方、香港株はほぼ横ばいで引けた。中国市場は3日も春節(旧正月)連休のため休場中。
このほか、タイ株は5年以上ぶりの安値付近で推移した。インドネシア株は2.2%安と6カ月ぶりの下げ幅を記録した。
メイバンク証券(シンガポール)のプライムブローカー取引担当責任者、タレック・ホルチャニ氏は「市場参加者は潜在的な影響をまだ完全には把握していないと思う」と指摘。「一部投資家はトランプ氏の関税に対する決意を過小評価し、さらなる交渉を期待していた可能性がある」と語った。
1月31日に最高値を更新した金は3日、ドル高により小幅安となった。[GOL/]
投資家のリスク志向を反映してきた暗号資産(仮想通貨)は下落。ビットコインは1月31日以降8%以上下落し、イーサは25%下落してトランプ氏の米大統領選勝利以来の上昇分が帳消しとなった。
一方、債券市場は消費者物価上昇によるインフレへのマイナスの影響と、成長への打撃による金利引き下げの可能性の間で板挟みになっているようだ。
米10年債利回りは約4.5ベーシスポイント(bp)低下して4.52%となった。
<米国民に「多少の痛み」>
トランプ氏は2日、メキシコ、カナダ、中国に対する包括的な関税が米国民に痛みをもたらす可能性があると述べた。
カナダとメキシコの首脳と3日に話し合うと明らかにしつつ、「劇的なことは期待していない」と指摘。フロリダ州の私邸からワシントンに戻った際、記者団に「彼らはわれわれに多くの借りがある。彼らが支払うことを私は確信している」と語った。
また、欧州連合(EU)に対しても関税は「間違いなくかかる」と述べたが、時期については明言しなかった。
トランプ氏は、関税は不法移民と違法麻薬取引を取り締まるために必要だと主張。「短期的には多少の痛みを伴うかもしれない。国民はそれを理解している。しかし、長期的に見ると、米国は実質的に世界の全ての国からむしり取られてきた」と語った。
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