- 2025/01/16 掲載
インタビュー:企業価値向上へ投資家との対話重要、資産活用も検討=東京ガス社長
[東京 16日 ロイター] - 東京ガスの笹山晋一社長は、ロイターとのインタビューで、企業価値向上に向け、投資家との対話を通じて市場に分かりやすいメッセージを伝えることが重要との考えを示した。株主還元も含めた資産活用の具体的な内容を詰めているとし、市場を意識した経営を進める考えを改めて強調した。東京ガスは、アクティビスト(物言う株主)の米エリオット・マネジメントが5%超の株式を保有している。
東京ガスは昨年4月に続き、10月にも400億円を上限とする自社株買いを発表した。同時に累進配当の方針を明示するなど資本政策を相次ぎ決定。24年3月期の純利益に対する総還元性向は6割超を見込み、現中期経営計画で示している総還元性向4割程度を大きく上回る。
笹山氏は、現中計で総還元性向を引き下げて以降、投資家から厳しい意見があったといい「当時から4割は目安で場合によってはプラスアルファがあると考えていたが、投資家との対話を通じてマーケットに分かりやすいメッセージを伝えることが重要と考えた」と話す。
「まず第一弾」として10月には、自社株取得のほか資本政策を意識した企業価値向上策に取り組む方針を掲げた。東ガスは現在、不動産に限らず非効率資産の洗い出しを進め、売却すべき資産について検討中だ。笹山氏は、成長投資もしくは株主還元も含めた資産活用の仕方について具体的な内容を詰めているとし「しかるべきタイミングで公表したい」との考えを示した。
11月19日付の大量保有報告書によると、エリオットは東ガス株を9月から11月にかけて取得し、5.03%に相当する約1955万株を保有している。事情に詳しい関係者によると、エリオットは「パークハイアット東京」が入居するビルや豊洲の土地など東ガスが保有する不動産に1兆円以上の価値があると試算。資本効率が悪化している中で、中核事業と関連が薄い資産の整理について言及している。エリオットのコメントは得られていない。
エリオットの関係者らと面談を実施したかについて笹山氏は明言を避けたが、自らが世界の機関投資家と対話する機会を設けているという。投資家からは、脱炭素を見据えた成長投資を期待する声もある一方で、資産効率の向上を求める声もあるとし、現中計の目標達成に向けて「全ての投資家のニーズを満たすのは難しいところがあるが、われわれとしてもやるべきだと思うことについてはしっかりやっていく」と語った。
東ガスは、現中期経営期間の最終年度に当たる26年3月期の自己資本利益率(ROE)8%を目標としているが、25年3月期のROE見通し4.8%程度は、これを大きく下回る。
24年3月期の有価証券報告書によると、東ガスの賃貸等不動産の時価は5800億円。市場では、こうした不動産の売却などによる株主還元や成長投資への期待で、追加的な自社株取得を公表した10月30日から株価は15%程度上昇している。
<北米事業に成長性、トランプ次期政権も追い風に>
笹山氏は中計で掲げている北米事業の拡大にも触れ、海外事業の中でもっとも成長性があるとの見方を示した。東ガスはシェールガス開発の米ロッククリフ・エナジーを約27億ドル(約3800億円)で買収、生産規模は従来の4倍程度に拡大している。
トランプ次期米大統領が、バイデン政権により一時凍結された液化天然ガス(LNG)輸出の新規認可を再開するとの見通しを示したほか、石油や天然ガスなどの化石燃料の開発を拡大するとした方針などを受け「エネルギーについてはかなり好意的に見る方が多い」(笹山氏)といい、事業環境も追い風だ。
今後の投資の加速や上積みの可能性について笹山氏は、中計の計画通りとし、次期政権の政策に応じて軌道修正するが、現時点で大きな修正が必要とは思っていないという。
東ガスの米国事業については、ロイターが豪ウッドサイド・エナジー・グループが保有するルイジアナ州のLNG輸出プロジェクトの出資を巡って協議していると報じている。東ガスは、米国で上流から下流まで面でバリューチェーンを構築する方針を掲げているが、笹山氏は「大きな考え方に合致するようなものであれば(出資も)考えていく」と述べるにとどめた。東ガスは、中計の3カ年で成長投資として6500億円を投じる計画を公表している。
※インタビューは15日に実施しました。
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