- 2024/12/18 掲載
情報BOX:トランプ氏言及のビットコイン戦略備蓄、想定される機能や利害
[ワシントン 16日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)ビットコインが16日に10万7000ドルを超えて過去最高値を更新した。トランプ次期米大統領がビットコインの戦略備蓄制度を創設する計画を改めて示唆したことで、強気ムードが高まったためだ。このビットコインの戦略備蓄がどのように機能するか、メリットとリスクなどを以下にまとめた。
◎戦略備蓄とは
何らかの危機や供給面の混乱が生じた際に、重要資源を放出できるように備蓄する仕組み。最も有名なのは米国の戦略石油備蓄だ。1973─74年のアラブ諸国による石油禁輸によって米経済が動揺した後、75年に議会で成立した法律により創設され、緊急時に供給できる原油在庫としては世界最大の規模を誇る。大統領は、戦争中やメキシコ湾岸へのハリケーン襲来時などに市場を落ち着かせる目的で、石油備蓄を放出してきた。
カナダは世界で唯一、メープルシロップを備蓄。中国は金属や穀物に加え、豚肉製品も戦略備蓄の品目としている。
◎ビットコイン備蓄がどう機能するか
トランプ氏のビットコイン戦略備蓄創設に行政権限の行使で足りるのか、あるいは議会立法が必要なのかは、アナリストや法律専門家の間で見方が分かれている。一部では、トランプ氏が米財務省の為替安定化基金(ESF)にビットコインの保有を命令できるとの意見もある。
戦略備蓄には、政府が犯罪者から押収したビットコインを組み入れる可能性も出てくる。ビットコイントレジャラーズ・ドット・ネットによると、そうしたビットコインは現在の価格で約210億ドル相当に上る。トランプ氏は7月の演説で手始めにこれらのビットコインを戦略備蓄に充当する計画を明らかにしたが、司法省の手元からどのような法手続きで移管するのかはなお不透明だ。
トランプ氏は、その後公開市場での購入を通じて備蓄を増やすかどうかには言及していない。これを実行するためには、政府が債券を発行する必要があるかもしれない。しかし一部の戦略備蓄推進派は、政府が金準備をある程度売却し、その資金をビットコイン購入に使えると主張している。
米政界で浮上しているビットコイン戦略備蓄を巡る提案のうち、最も具体的なのは親仮想通貨のルミス上院議員の構想。ルミス氏は先月、CNBCで個人的にもビットコインを保有していると明かした。7月には財務省が運営する戦略備蓄創設に向けた法案を提出した。
この法案には、財務省が100万ビットコインの戦略備蓄規模に達するまで向こう5年で年間20万ビットコインを購入するプログラムを立ち上げることが盛り込まれている。この備蓄量は全世界のビットコイン供給量約2100万ビットコインの5%前後を占める形。購入資金は米連邦準備理事会(FRB)の預金と金保有で生じる利益を充当し、この戦略備蓄は最低20年維持するという。
◎戦略備蓄のメリット
トランプ氏は7月の演説で、戦略備蓄は中国との競争激化に直面している米国が世界のビットコイン市場で優越的地位を築く上でプラスになるとの考えを示した。
他の推進派は、ビットコインを備蓄すれば長期的に価値が上昇し続ける公算が大きく、増税せずに財政赤字を減らせるし、ドル高にも作用すると主張している。
ルミス氏は11月にFOXビジネスで、自身の計画を実行すれば米国の債務は20年で半減できると発言。「われわれがインフレから身を守り、ドルの価値も守ってくれる」と力説した。
推進派によると、ドル高は中国やロシアといった敵対勢力に対する米国の立場強化にも役立つという。
◎戦略備蓄のリスク
仮想通貨の懐疑派は、ビットコインは他の大半のコモディティーと異なり、実物資産としての本源的な使い道はなく、米経済が正常に稼働する上で重要でもないと話す。
また2008年に創出されたビットコインは、長期的に価値が高まっていくと想定するにはまだあまりにも取引期間が短く、値動きも不安定で、暗号資産ウォレットは引き続きサイバー攻撃に対してぜい弱だと指摘した。
その振れの大きさゆえに、どこかの政府が売買すれば価格に桁違いの影響を及ぼしかねない面もある。
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