- 2024/10/18 掲載
アングル:25年春闘、4%台の着地か 賃上げモメンタムは維持
[東京 18日 ロイター] - 人手不足が継続する中で来年の春闘も賃上げのモメンタムは維持されるとみられているが、連合が基本構想で掲げた「5%以上」には届かないとの見方が出ている。企業の体力次第で賃上げを見送ったり、弱めたりする動きが出てくる可能性があり、一部のエコノミストは最終的に4%半ばから後半での着地になるのではないかとの見方を示す。
<高水準の賃上げ環境は維持>
来年の春闘について「賃金と物価の好循環が回り始めている。賃上げの流れは変わらない」と、ある経済官庁幹部は話す。経済の緩やかな回復と構造的な人手不足により、高水準の賃上げが実現する環境は引き継がれているとみている。
ほかの企業に先駆けて食品大手のサントリーホールディングス が7パーセント程度の賃上げを目指す方針を示したことも、前年と同じ流れだ。連合も来年の春闘の要求水準を「5%以上」で据え置き、賃上げモメンタムの定着を目指す。
賃上げ率は2021年の1.7%を直近のボトムとして、22年に2.0%、23年に3.5%、24年に5.1%と3年連続上昇。中長期の目線で去年・今年と賃上げに踏み切った企業が多く、足元で悪い影響が出てきていても賃上げの動き自体は止められないとの指摘もある。
<人件費増、内需系や中小に負担>
ただ、2月決算の多い小売業や外食業の中間決算では、賃上げによる人件費上昇が利益を圧迫した企業もみられた。例えばイオン。9日に発表した3─8月期決算は営業収益が前年同期比6.1%増となり4期連続で過去最高を記録したものの、人件費の増加などが影響して営業利益は同16.2%減となった。
吉野家ホールディングスの3─8月期決算も増収減益。商品の価格改定や販売促進などで売り上げを伸ばしたが、パート・アルバイトの時給アップや正社員の賃上げなどが減益要因となったという。
日銀の神山一成・大阪支店長は7日の支店長会議後の会見で、一般消費者と直接向き合うBtoCビジネスでは、個人消費が強くなってきていると言えない中で価格を上げられるかどうか不安が残り、来年の賃上げはよく分からないとする企業が相対的に多い、と述べていた。
10月のロイター企業調査では、24年度下期の業績見通しについて「計画通り」との回答が約6割となったものの、下振れも約3割と相応の割合を占めていた。需要の不確実性とともに、人件費や原材料費などのコスト増などが意識されている。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは「25年の春闘賃上げ率は前年並みとする企業が多い可能性が高い」としつつ、円安の悪影響などで利益が圧迫されている内需企業や中小企業は弱めの結果となり、「全体としては4%台半ばから後半の着地になる」との見方を示す。
明治安田総合研究所のエコノミスト、前田和孝氏も、賃上げ率は今年に比べてやや鈍化し「4%台後半くらいが落としどころになるのではないか」とみる。
物価を持続的・安定的に2%上昇させる目標を掲げている日銀は、賃金と物価が相互に連関しながら伸び率を高めていく「賃金と物価の好循環」を重視している。
明治安田総研の前田氏は、現時点で今年12月と予想している日銀の追加利上げに影響はなく、最終的に賃上げ率が4%台後半の水準でまとまってくるようであれば来年以降の再利上げにも「ニュートラル」と話す。
日銀の安達誠司審議委員は16日の会見で、来年の賃上げについて「今年並みは欲しい」と明言。どのタイミングで賃金の見極めをするかは「流動的だ」としつつも、来年3月に出てくる春闘の1次集計が「1つの大きなメルクマールになる」との認識を示している。
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