- 2024/09/28 掲載
アングル:中国大手行への資本注入必要、不良債権処理と融資促し景気下支え
[香港 26日 ロイター] - 中国当局が追加の景気支援策を相次いで発表する中、アナリストは大手銀行に速やかに資本を注入し、景気下支えに向けて融資と不良債権処理を促す必要があると指摘している。
銀行の利益率は景気減速や不動産危機ですでに圧迫されているが、24日発表された住宅ローン金利の引き下げが、さらに利益率を押し下げる要因になるとみられている。
大手行は預金金利の引き下げで利ざやへの影響を緩和するとみられているが、アナリストは不良債権処理や中小銀行救済の可能性に備えるため、新たな資本注入が必要になると分析している。
大手国有銀行は経営の悪化した中小銀行の救済を求められることが多い。
S&Pグローバル・レーティングスは、中国農業銀行、中国銀行などの4大国有銀行について、6月末時点で7380億元(1050億ドル)の総損失吸収能力(TLAC)資本が必要だと試算している。
ブルームバーグ・ニュースは26日、中国政府が複数の大手国有銀行に対する最大1兆元(1423億9000万ドル)の資本注入を検討していると報道。低迷する経済を下支えするため、銀行の資本を増強することが狙いで、大手行への大規模な資本注入は世界的な金融危機以降初となる。
ガベカル・ドラゴノミクスの中国金融担当アナリスト、Xiaoxi Zhang氏は「(資本注入の規模は)規制当局が銀行システムをどのような状態にしたいかに左右される。システミックリスクの防止という基本路線を堅持するなら、中小銀行への対応が中心になるのではないか。大手行には当面、十分な資本がある」と指摘。
「近年銀行システムに積み上がった不良債権を処理したいのであれば、銀行のバランスシートをリセットするために、はるかに多くの資本注入が必要になる」と述べた。
中国当局は24日発表した総合的な景気刺激策の一環で、既存住宅ローンの金利を平均で50ベーシスポイント(bp)引き下げることを明らかにした。
アナリストによると、銀行は預金金利の引き下げを通じて利益率への影響を緩和するとみられるが、それでも過去最低水準にある純金利マージンに影響が出る見通しだ。
JPモルガンの試算によると、来年の純金利マージンに差し引きで3bp程度の影響が出るとみられる。
中国人民銀行(中央銀行)は24日、「金利調整計画」が銀行の利益に与える影響は中立的で、借り入れコスト低下と預金金利の調整で純金利マージンはほぼ横ばいで推移するとの見方を示した。
当局は預金準備率の引き下げと利下げも発表しており、JPモルガンのアナリストは「こうした政策の組み合わせは短期的には銀行セクターにプラスだ」と指摘。ただ、投資家が保有する一部の国有銀行株を売却し、資本注入の行方を見守る可能性があるとの見方を示した。
その上で「国家への奉仕を巡るリスクが増えるとの懸念や中期的な利益率に対する懸念が浮上する可能性がある」としている。
S&Pグローバル・レーティングスのディレクター、Ming Tan氏は「当局は資本注入とバランスシートの整理でリスクの高い金融機関を優先するだろう」とした上で、規制当局が健全な銀行に対し経営不振銀行の吸収合併を奨励するとの見方を示した。
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