- 2024/09/24 掲載
アングル:FRBの大幅利下げ効果、金利低下「先食い」で今後は不透明
[ワシントン 23日 ロイター] - 米金融市場では連邦準備理事会(FRB)が18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利下げを決める前から、既に住宅ローンなどの金利や社債の利回りが低下し、家計や企業の借入コストが低下していた。そのためFRBが実際に利下げした後でローン金利や社債利回りの低下がどのようなペースで続くのか不透明だ。11月5日に米大統領選を控えるだけに、利下げで消費行動が変わるのか、なおさら目が離せない。
最近の調査から、物価上昇のペースは劇的に鈍ったものの、2年近く続いた高インフレの影響で人々の気分は沈んだままだということが分かる。
米大統領選の激戦区であるネバダ州のリノで暮らすジュリー・ミラーさんは「娘が何年も家を買おうとしているが、まだ買えない」と言う。ネバダ州は新型コロナウイルスのパンデミック期に住宅価格が急騰した。
ファストフードのタコベルが値上げしたため、毎週金曜日に恒例にしていた孫娘とのタコベルでの食事も控えざるを得なくなったミラーさんは「バイデン大統領はインフレにうまく対処していない」と不満を漏らす。大統領選では民主党候補のハリス副大統領ではなく、共和党候補のトランプ前大統領に投票するつもりだ。
<借入コスト低下は一巡か>
FRBは今後も利下げを続ける公算が大きく、大統領選挙の翌日に始まる次回のFOMCでも0.25%の追加利下げが予想されている。
FRBが緩和的な金融政策を予告していたこともあり、既に人々の手元にお金が戻り始めている。例えば、最も一般的な住宅ローンである30年固定型の平均金利は1年前には8%に迫っていたが、足元では6%に接近している。インターネット不動産仲介レッドフィンの最近の推計によると、9月15日までの4週間に売却または売りに出された住宅の価格の中央値は4月に記録した過去最高額から300ドル下落し、昨年よりも3%程度下がっている。
しかしこうした価格の調整は既に終わっており、「住宅ローン金利は向こう数週間、比較的安定して推移する公算が大きい」とレッドフィンのエコノミスト、チェン・ザオ氏は同社ウェブサイトで予想した。実際のところFRBスタッフの標準的な予測によると、住宅ローン金利は5%台半ばに落ち着く見込みで、住宅ローン金利の低下は既にほぼ終了していることになる。
銀行は最も信用力の高い借り手に適用する「プライムレート」をFRBの利下げに合わせて引き下げ始めている。しかし自動車ローンや消費者ローンなどの金利はこれまでのところあまり動いておらず、銀行がローンコストを引き下げるにはまだ時間がかかるかもしれない。
米経済は、雇用市場が弱まる懸念があるにもかかわらず、比較的堅調を保っている。失業保険新規申請件数は低水準を維持し、直近週には予想外の減少を示した。8月の失業率は4.2%と昨年から上昇したが、過度な賃金上昇や物価上昇圧力を引き起こすことなく持続可能だとFRBが見なす水準。フィラデルフィア連銀製造業景況指数は最近上昇し、8月の小売売上高も予想に反して増加した。
しかし経済指標のこうした改善で国民の意識が決定的に変化したわけではない。
ロイターとイプソスの世論調査によると、「米経済は順調に推移している」と回答した人の割合は2022年5月の17%が今年8月には25%に上昇したが、なお60%が「間違った方向に推移している」と回答した。この割合は22年5月の74%からは減っている。
またニューヨーク連銀の調査では、今年初めには「昨年よりも生活が改善した」と感じ、今後さらに改善すると予想する人が多かったが、その後インフレの鈍化が進み、利下げの可能性が高まったにもかかわらず、生活についての見方は逆に悪化した。
ミシガン大学消費者信頼感指数は一時改善したものの、この数カ月は再び悪化し、パンデミック前の水準を依然として下回っている。
米国勢調査局の最近の調査によると、過去1週間で生活費の支払いに困ったと回答した世帯の割合は、2022年のインフレのピーク時からは減ったが、最近はほとんど改善が見られない。
パウエルFRB議長は先週の利下げ決定後の会見で今後も利下げする方向は示したものの、ペースについては言質を与えなかった。
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