- 2024/08/23 掲載
アングル:米企業幹部、大統領選への言及が急増 政策の見通し立たず
[22日 ロイター] - 今年の米大統領選は米企業幹部による選挙への言及が4年前の前回を大幅に上回っていることが、各種データから分かった。民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領の間で政策の隔たりが大きく、税制や関税、価格決定力などの見通しが不透明なためだ。
LSEGワークスペースのデータによると、8月15日までの2カ月間で、S&P500種総合株価指数の構成企業が決算発表時に「選挙」や「ホワイトハウス」に言及した回数は2020年の同期間に比べて34%増加した。
また米調査会社ファクトセットの分析によると、第2・四半期決算で「選挙」に触れた企業による政策テーマへの言及で最も多かったのは再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などエネルギーと温室効果ガス排出に関するもので、これにインフレ抑制法(IRA)、関税、通商が続いた。
CFRAリサーチのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は、2020年の選挙時よりも候補者間の政策の違いが鮮明なため、企業は決算発表で活発に選挙に言及していると指摘。「どちらの政党が政権を握るかは企業利益を大きく左右するし、特にどちらかが圧勝した場合には影響が大きい」と述べた。
ハリス氏が7月末にバイデン大統領に代わって民主党候補となったことで、投資家にとっては不透明感が一段と高まった。
ダコタ・ウェルス・マネジメントのシニアポートフォリオマネージャー、ロバート・パブリック氏は「トランプ氏の計画についてはある程度見当がつくが、ハリス氏の計画はもっと不透明だ。バイデン政権の政策を継承するとみられるが、多少は違いがあると思う」と述べた。
トランプ氏は全中国製品に60%かそれ以上の関税を課すと宣言し、大規模な貿易規制を導入する意向を示している。また、米国の全輸入品に一律10%の関税を課す案も示している。
シティ・リサーチによると、米国株のファンダメンタルズにとって最も重要なのは関税と税金だ。また、法人税引き上げは関税よりも企業利益に対するリスクが大きい。
アプタス・キャピタル・アドバイザーズのポートフォリオマネージャー、デビッド・ワグナー氏は「結局のところ税金が全てであり、それこそが株式市場の上昇を抑える要因だ」と述べ、だからこそ多くの企業が法人税率の改定に触れ、先手を打とうとしているとの見方を示した。
ハリス氏は選挙で勝てば法人税率を21%から28%に引き上げる考えを表明している。一方、トランプ氏は大統領在任中に法人税率を35%から21%に引き下げるとともに、来年期限切れとなる他の減税措置も実施。今回の選挙ではこうした減税の恒久化を公約に掲げている。
8月2日から7日に行われたイプソスの世論調査では、ハリス氏の支持率は42%とトランプ氏の37%を上回ったが選挙戦は接戦で、企業は特定の投票結果を見込んで対応に着手するのが難しい。
ダウのジェームズ・フィッタリング最高経営責任者(CEO)は、関税を見越した事前の在庫積み増しの動きについて、「まだ何も始まっていないと思う。主に選挙結果や実際に導入される政策がはっきりしないためだ」と述べた。
ただ、既に関税への対応を立てている企業もある。化粧品大手エルフ・ビューティーのタラン・アミンCEOは、トランプ氏が勝利した場合、関税引き上げ分を転嫁するために値上げする考えを示した。また日用品大手ニューウェル・ブランズのクリス・ピーターソンCEOは、キッチン用品の一部生産を中国から移転していると明かした。
選挙結果はエネルギーやEVの分野に大きな影響を及ぼすかもしれない。
エネルギーについてハリス氏はバイデン氏の政策を引き継ぐと予想されており、バイデン氏のIRAを支持している。一方、トランプ氏はこうした政策の多くを撤回する見通しで、EV購入に対する7500ドルの税額控除の打ち切りを検討する考えも示している。
ハリス氏やトランプ氏が政策をどの程度推進できるのかは議会の支持を得られるかにも左右される。グレートヒル・キャピタルのトーマス・ヘイズ会長は「誰が大統領になっても、下院と上院をどの政党が制するのかが鍵になる」と述べた。
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