- 2024/08/05 掲載
焦点:世界株安、押し目買いの好機か否か 投資家はジレンマ
[4日 ロイター] - 世界の株式市場が急落したことで、押し目買いを狙っていた投資家の視界は曇っている。米国経済を巡る懸念と、失望を誘うハイテク企業の決算を踏まえると、相場はさらに下げる恐れもあるからだ。
先週末2日間の下落により、米S&P500種総合指数は7月の高値を約6%下回った。ナスダック総合指数は2022年初頭以降で初めて、過去最高値からの10%下落に見舞われた。欧州と日本を含むアジアの株価も急落した。
今週は投資家にとってジレンマの週になるだろう。過去2年間は、相場の下げ局面で買いに入れば利益を得られていた。S&P500は22年10月の安値から約50%上昇している。
しかし先週の弱い米経済指標を機に米国の景気後退懸念が強まるようなら、押し目買いの投資家は損失を被るリスクがある。トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズによると、第2次世界大戦後の景気後退局面で、S&P500は平均29%下げている。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが3日発表した第2・四半期決算も、押し目買いを検討していた向きを立ち止まらせるかもしれない。同社はアップル株の約保有を半分に減らし、現金保有を2770億ドルに急増させたからだ。同社はしばしば、適正価格で買えるセクターや個別株が見当たらない時に現金を積み上げる。
インターピッド・キャピタルのポートフォリオマネジャー、マーク・トラビス氏は「人々はリスクを見直し、ポジションが適切かどうかを再検証し始めている」と語った。
市場のリスク志向は、この1週間で急低下した。米連邦準備理事会(FRB)の利下げが遅れたために経済成長が損なわれているのではないか、との懸念から、トレーダーは値がさの半導体株から工業株に至るまで手当たり次第に株を売り、資金を米国債などの安全資産に振り向けている。
アマゾン・ドット・コムやアルファベット、インテルなどのハイテク企業決算が期待に届かず売りが出たことで、株価の割高感に対する懸念にも拍車がかかった。
<光明>
ただ、足元の相場急落は小休止に過ぎないと考え、押し目買いのタイミングを見極めようとしている投資家もいる。
ビレール・アンド・カンパニーのポートフォリオマネジャー、ラマール・ビレール氏は「値がさ銘柄の一部を買おうと狙っていたが、その機会が訪れず不満だった。これで買いに入れる」と話した。
S&P500とナスダックは、足元の急落後でも年初に比べると12%前後上昇している。半導体大手エヌビディアは高値から20%余り下げたが、それでも年初より約117%高い。
2日発表の7月米雇用統計は予想を下回ったが、労働力人口が2カ月連続で大幅に増えるなどの「光明」もある。ハリケーン「ベリル」の襲来によって統計にゆがみが生じたのではないか、との見方もある。
また、ハイテク企業の決算は市場の期待ほどではなかったかもしれないが、アップルやメタ・プラットフォームズなどを含めて強い内容だった。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの最高投資ストラテジスト、マイケル・アロン氏は、巨大ハイテク企業は「依然として素晴らしい事業を行い、高い競争力を誇っている。キャッシュフローも相変わらず力強い。投資家は短期的に過剰反応を示しがちだ」と話す。
<恐怖トレード>
ただ、足元の相場下落で株のバリュエーションはやや下がったとは言え、歴史的に見るとまだ割高だとの指摘もある。
LSEGデータストリームによると、S&P500の1年後の予想利益に基づく株価収益率(PER)は先週時点で20.8倍と、7月半ばの21.7倍をわずかに下回ったに過ぎないことに加え、長期平均は15.7倍だ。つまり、今後も悪いニュースが出れば株価は一段と下落しやすい。
B・ライリー・ウェルスの市場チーフストラテジスト、アート・ホーガン氏は「年前半に堅調だった景気が平常に戻る兆しが出て、市場はそれに反応している。市場が過剰反応を示し、投資家が何でもかんでも利益確定売りの口実にする可能性はある」と述べた。
トレーダーは警戒感を強めており、「恐怖指数」と呼ばれるシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX)は2日、昨年3月以来の最高水準を付けた。
一方、米10年債利回りは先週40ベーシスポイント(bp)近く下げ、20年3月以降で最も大きな週間低下幅となった。利下げの織り込みと、ボラティリティーの上昇に備えて安全資産に逃げ込む動きが相まった結果だ。
ファー・ミラー&ワシントンのマイケル・ファー社長兼最高経営責任者(CEO)は「非常に大きな動きだ。明らかに恐怖トレードの様相を示している」と語った。
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