- 2024/08/05 掲載
委員2人が早期利上げに前向き、「遅きに失することなく」の声も=6月日銀要旨
Takahiko Wada
[東京 5日 ロイター] - 日銀が6月13―14日に開いた金融政策決定会合では、2人の委員から早期の追加利上げに前向きな意見が出ていたことが明らかになった。このうち1人の委員は、物価の上振れリスクが消費者マインドに影響していることを踏まえ「次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく適時に金利を引き上げることが必要だ」と主張していた。
日銀が5日、同会合の議事要旨を公表した。日銀は翌7月の会合で追加利上げを賛成多数で決定した。
6月会合で委員らは、「展望リポート」で示した経済・物価の見通しが実現し基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ金融緩和度合いを調整していくことになるほか、経済・物価見通しが上振れたり見通しを巡る上振れリスクが高まったりする場合も、利上げの理由となるとの認識を共有した。
その上で1人の委員は、見通しに沿った物価の推移が続く中で「最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み、物価が上振れる可能性もある」と指摘。「リスクマネジメントの観点から、金融緩和の度合いをさらに調整することの検討も必要だ」と述べた。
一方で、ある委員は政策金利の変更について「消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想物価上昇率の上昇などをデータで確認したタイミングで検討することが適切」との見解を示し、追加利上げの前提としてデータの確認に言及した。
1人の委員は、個人消費が盛り上がりを欠く中で一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続いていることから、これらの影響も確認する必要があると指摘。その上で「当面は現在の金融緩和を継続して、企業の前向きの構造改革を後押しすることが適当だ」と述べた。
<輸入物価の再上昇、「物価上振れリスク」>
日銀は7月の利上げ決定にあたり、輸入物価が再び上がっていることを挙げ、先行き「物価が上振れするリスクには注意する必要がある」とした。
6月会合では、何人かの委員が、最近の為替円安などを受けて再度輸入物価が上昇してきており「物価の上振れリスクとなっている」と指摘した。この点に関連し、ある委員は、現時点では輸入物価の上昇が2022年以降のような大幅な消費者物価の上昇をもたらすとは考えにくいが「賃金や物価は上がりにくいという社会的なノルムの転換もあり、従前より価格転嫁が進みやすく、2024年後半に向けて価格引き上げの動きが再び生じる可能性もある」と話した。
為替円安と金融政策運営についても議論が展開された。委員らは、為替円安の動きについて「物価の上振れ要因であり、金融政策運営上、十分に注視する必要がある」との認識を共有した。
1人の委員は為替円安について、国内物価への転嫁度合いが強まっていることや、現実の物価が2%を超えていることを踏まえると「物価の上振れリスクが顕在化した際に生じ得る損失も高まっている」と警戒感を示した。その上で「リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な適切な政策金利の水準はその分だけ引き上がると考えるべきだ」と主張した。
足元の外国為替市場は、7月の決定会合で植田和男総裁が追加利上げに前向きな姿勢を示したことや米経済指標の悪化で、6月会合当時に比べ大幅に円高に振れている。
<国債買い入れ減額>
大規模緩和の終了後も続けてきた国債買い入れについて、6月会合では先行きの減額方針を決定。7月会合で今後1―2年の具体的な減額計画を決めることにした。
何人かの委員は「予見可能性と柔軟性とのバランスを踏まえた上で減額の幅やペース、減額の枠組みなどの具体的な計画を検討していく際には、市場参加者の意見などを丁寧に確認することが重要」と指摘した。何人かの委員は、こうした確認を進めるためにも、今回の会合で減額方針を決定することが適切との見方を示した。
複数の委員は、今回の会合で具体的な計画を決定するのではなく、市場参加者の意見を確認するプロセスを踏むことで「よりしっかりとした減額を実施できる」との認識を示した。
日銀が保有する上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の取り扱いについては、時間をかけて検討していく必要があるとの認識を委員が共有した。
決定会合では、財務省の出席者から、鈴木俊一財務相と連絡を取るために会議の一時中断の申し出があった。植田議長は申し出を承諾、決定会合2日目の午前11時34分に中断し、同47分に再開した。
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