- 2024/07/30 掲載
焦点:FOMCで9月利下げ地ならしか、声明のインフレ表現修正も
[ワシントン 29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利据え置きを決定するだろう。ただ、物価上昇率が目標の2%に近づいていると認め、早ければ9月にも利下げを開始するための地ならしに動きそうだ。
FOMCに先立ち、政策担当者の間から最初の利下げの正確なタイミングは明示したくない雰囲気がうかがえた。それでも物価圧力が全般的に和らぎ、総合ベースの物価上昇率がFRBの目標に接近するとともに、雇用や住宅などの指標がそうした流れの継続性を示している最近の情勢を歓迎する声が聞こえてきている。
26日にはFRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数の6月分が公表され、2022年には一時7.1%まで跳ね上がった前年比上昇率は2.5%と、5月の2.6%から一段と鈍化したことが分かった。実際3月以降、PCE物価指数前月比上昇率を年率換算したベースでは1.5%と、目標の2%を0.5ポイントも下回っており、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアも同期間で2.3%と目標圏内にある。
これと物価圧力全体が後退している感触を踏まえれば、FRBが今回のFOMC声明でインフレについて従来の「高止まり状態にある」との表現を修正し、物価上昇率が2%に戻る確信が強まっていると指摘する十分な動機になるのではないか。かねて政策担当者は、物価上昇率が完全に目標へ到達する前に、利下げを始めるべきだとの考えを示している。
セントルイス地区連銀総裁を務めたジム・ブラード氏は、物価上昇率が目標から50ベーシスポイント(bp)というのはそれほど遠い距離ではないよう見えると述べた上で「それは確かに高止まりではある。だが以前ほどの高止まりではない」と説明。FOMC声明のインフレに関する表現は恐らく「緩やかな高止まり状態」へとやや修正され、昨年来のディスインフレが本物で逆流するとはみていない、と市場に重要なシグナルを送ることになると予想した。
シティのグローバル・チーフエコノミスト、ネーサン・シーツ氏は「米経済が減速しているのは間違いない。リスクのバランスは4カ月前とは異なっている」と分析。ただFRBとしてはもう少し確信を強めたいので、7月に利下げを示唆し、9月に決定するという感じではないかとの見方を示した。
<大統領選の渦中に>
今回のFOMCで利下げが近いとFRBが示唆すれば、9月17─18日のFOMCで少なくとも25bpの利下げが決まるのはほぼ確実と考えている投資家の動きと足並みがそろうことになる。
一方でFRBは、不透明感が強まるばかりの大統領選の渦中にも否応なしに放り込まれる。
インフレは以前に比べれば選挙の中心的な争点ではなくなっているかもしれないが、有権者の行動に一定の影響を及ぼす可能性は残されている。
オックスフォード・エコノミクスが最新のモデルに基づいて分析したところでは、無党派層が今後の経済データをどう解釈するかが、投票先が共和党候補のトランプ前大統領になるか、それとも民主党候補指名が確実なハリス副大統領になるのかを左右するという。
もしも無党派層が物価水準やこれまでの物価上昇の大きさにこだわればトランプ氏に、最近の物価動向と低い失業率を重視すればハリス氏に、それぞれ票が流れるというのが同社の見立てだ。
こうした経済物価情勢において、FRBの利下げは住宅ローンやクレジットカードローンの金利低下などを通じて人々がすぐに効果を実感しやすい。
そのため共和党議員からは今月、FRBのパウエル議長に対して、9月の利下げは与党民主党を有利に、トランプ氏を不利にする試みに見えると難色を示す意見も出された。
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